第17話 新型危険種に襲われて死にたくない
「アリィ、そなたは元気でやっておるか?」
「はい、おかげさまで。ご心配していただきありがとうございます」
うむ、と皇帝は満足そうに頷く。
その様子をオネストはニヤニヤと見ている。手と口こそ食事のために動かしているが、視線だけは二人のほうへと固定されている。
「……最近、新型危険種が出ているそうだが。アリィは調査には出ていないのだよな?」
「はい。エスデス将軍や他のイェーガーズが出動しました」
「大臣のおっしゃるとおりです。私はあくまで前に出るのではなく、彼らのサポートが仕事ですので」
オネストとアリィの返答に、皇帝は満足そうに頷いた。
「ならばよいのだ。好んで人を食う、極めて危険なものだと余も報告を受けている。アリィはそんな危ないところに出てほしくない」
「おや陛下。随分とアリィ殿のことを気にしておられますなぁ」
ニヤニヤと笑うオネストの言葉に、皇帝は真っ赤になって答える。
「あ、アリィはいつも危険な目にあっているから心配になるのだ! いくら帝具があるとはいっても、万が一のことがあるかもしれんだろう!」
皇帝は幼い。
敬愛する父は急に倒れ、帰らぬ人になってしまった。その妻であり皇帝の母である女性も夫の後を追うかのように毒を飲んで死んでいたのが発見されている。
オネストが今まで彼を支えてきたが、やはり皇帝は孤独感を紛らわせることはできなかったのだ。
そこに現れたのが、アリィという一人の少女。
皇帝付き侍女となったこともあり自然と皇帝と接する機会は増える。また、オネストをはじめ皇帝の周りにいたのは大人ばかりだった。そこへまだ皇帝よりも年上とはいえ、だいぶ年の近い……いわば「お姉さん」的な存在ができたのだ。
皇帝である前に一人の少年である彼が、アリィのことを気にかけるようになるのは当然といえば当然であった。
「アリィ……これからも、身の回りには気を付けるのだぞ」
「はい、心得ております」
今日も彼女は笑う。どす黒い死への恐怖を心に秘めたまま、相手に気取らせることはなく。
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