ハーメルン
侍女のアリィは死にたくない
第2話 両親と一緒に死にたくない

「今日の標的はサンディス家だ。当主とその妻、それに一人娘。全員が標的だ」

アリィが父の死体を見つける頃より半日前。
時刻は昼、ナイトレイドのアジトにて。
革命軍の裏の執行部隊である彼らは、夜に行う襲撃について最終的な打ち合わせをしていた。
全員が集まる中、ボスであるナジェンダは用意させた似顔絵を机の上に置いて確認を進める。

「レオーネ、調査は済ませているな?」
「ああ。市民をさらって拷問を繰り返す外道の家族だ。この目この耳で確認した。有罪だ」

金髪の女性、レオーネがその端正な顔を歪ませ、吐き捨てるように調査結果を報告する。彼女の言葉に、その場にいる全員から僅かににじみ出る殺気。
平和な国を願う彼らにとって、サンディス家の行いは許しがたい所業だ。

「聞いての通りだ。新しい国に、民を虐げる外道はいらん。民の平和のためにも、これ以上犠牲を出せるわけにはいかない。悪逆非道のクズ共を、狩れ!!」
「「「「了解!!」」」」

それぞれが思いを胸に、ボスの指示へ返事を返す。
民が幸せに生きる国を作るために、人々を苦しめる一家を殺す。
やっていることをどう言いつくろおうとまぎれもなく殺し。そこに仁義はあれど正義はない。
しかし、彼らが後悔するかといえばそれは否である。そんなやわな覚悟だけしか持たない者など、ここにはいないのだから。





一方、アリィはそのころ、かねてより気になっていたことを父に尋ねていた。

「お父様、お聞きしたいことがあるのですが」
「ん? どうしたアリィ」

この日ゴーザンは自宅の書斎にて書類仕事をしていた。わざわざ平民同様外に出なくても己の仕事ができるというのが、ゴーザンのひそかな自慢であったりもする。書類を外に運んだり逆に持ってくるのはすべて部下にさせていた。
書類から目をあげたゴーザンに対し、机を隔てアリィは質問を始めた。

「かねてよりのお楽しみで、最近お父様は特殊な首輪をよく使っておられるようですが……あれはいったい何なのでしょうか?」
「おお、おお、アリィや。気になるかね。ならば教えてあげようとも」

思いがけぬ娘の質問に、ゴーザンは頬を緩めて完全に書類から手を離した。
正直なところ、自分と妻の楽しみに対し、アリィはそこまで楽しそうでもなかったので興味がないのだろうかと不安になっていたところだったのだ。そこへアリィが、自分の最近のお気に入りに興味を示した。

これを父として喜ばずにはいられない。
あわよくばもっと楽しみを見出してくれれば、とすら思っていた。その心中に、拷問にあう平民への哀れみはかけらもない。

「あれはかつて、始皇帝陛下より我が先祖が預けられたものだというのは知っているな」
「はい、お父様」
「あの首輪はこの世に一つしかない……唯一のものだ。とある危険種から作られている」

思った以上に貴重なものらしい。
アリィは首輪の価値にたいそう驚いていた。しかし一方で、あの首輪から感じる何かへの疑問がより深まっていた。
あの首輪は、褒美に出されるようなものではない。負の感情のような何かが、あの首輪にはつまっている。
アリィはそれが気になって気になって仕方ないのだ。

「しかし、いくら危険種の素材でできたものとはいえ、どうして首輪をはめるとあのように」

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