第2話 両親と一緒に死にたくない
「うむ。そもそもなぜこの首輪が作られたのかという話にもなるのだが……」
立ち上がったゴーザンは本棚に近寄ると、古びた本を一冊抜き出した。
あれは確か首輪の調査について記されていると聞いた本だ。読もうと思ってはいたがゴーザンから説明を受けたほうが早いと思っていたのだ。
ゴーザンは再び椅子に座ると机の上の書類を脇にどけ、本を開いて置いた。
そのページには首輪だけでなく、いくつかの道具の絵が描かれている。
「これは……」
「アリィよ」
ゴーザンはニヤリと笑うと、大前提ともなる話を始めた。
「帝具、というものを知っているか?」
「時間だ」
夜。帝都が静まり返った闇の中でナイトレイドの面々が集まっていた。
彼らの視線の先には大きな屋敷――サンディス邸がある。
この大きな屋敷の中で、何人の罪なき民が殺されていったのだろう。その悲劇を終わらせるためにも、彼らは意識を研ぎ澄ませていた。
「アカメちゃん、結界の準備はオーケー。いつでもいいぜ」
糸の帝具、クローステイルを操るラバックが報告を行う。彼は糸を使った結界をはることで外からの侵入者などに対処する役割を担っている。騒ぎを聞きつけて警備隊が来る可能性もあるからだ。
「わかった。よし、行こう」
「よーーっし! 疼いてたまらないんだよね」
アカメの指示に、帝具ライオネルで獣化したレオーネは指を鳴らしながらサンディス邸に侵入する。彼女を追うように複数の影が屋敷の中へと入っていった。
「嫌な感じがします」
ベッドの上でアリィは目を開ける。
さっきまでぐっすり眠っていたのに、急に目が覚めた。頭の中で警報がなっているかのような悪寒と共に。
これも力の一つなのだろうかと、首元をさする。
「…………」
無言で寝床を出たアリィは、護身用に普段持っている短剣をいつも通り腰に携える。
そしてゆっくりと部屋を出た。
部屋を出た後は、周りの様子をうかがうと、すぐに駆け足になる。アリィは意識していなかったが、このとき、窓からは離れて走っていた。外から攻撃される危険を無意識のうちに考慮に入れていたのである。
そして、彼女の逃走は結果的に大正解であった。
彼女が部屋から離れて数分後。寝室に招かれざる客人がやってきた。
「……ここは寝室、であってるはずなんですけど。いませんねー」
メガネをかけた女性、シェーレは首をかしげた。
襲撃に気付いた? そのわりにはベッドに慌てた逃げた痕跡はない。
ただ、ふと起き上がって部屋を出ただけ。そう考えたほうが自然だ。
たまたま部屋を出たのなら戻ってくると考えられる。もっとも、他にも侵入した仲間がいるので彼女たちと遭遇したらそこで終わりだと思うが……。
「私はここで待ってましょうか」
時計があることを確認し、予定帰投時間までは潜伏することを選ぶ。
ふかふかのベッドに飛び込みたい気持ちはあったが、今は任務中。
名残惜しい気持ちを押し殺して彼女は部屋の陰に潜んだ。
もっとも、部屋の主がこの夜にもどってくることはついぞなかったのだが。
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