ハーメルン
侍女のアリィは死にたくない
第20話 罠にはめられても死にたくない


しばらくの時間を馬で走ってすごした。
しかし、罠どころか襲撃もない。わずかに緊張した心がほどけた三人は、会話をしながら馬を走らせていた。

「アリィさん、戦えないけどその分頭がまわるってすごいですよね。俺そんなに頭がよくないからうらやましいですよ……」
「そう落ち込まないで。私たちは私たちにできることをやればいいんだよ」
「そのとおりです! 私たちは戦闘専門の帝具使いであり、悪を狩る正義の戦士! ウェイブさんも自信を持って悪と戦えばいいんです!! ね、コロ?」
「キュ!」
「お、おう……」

目をきらきらとさせるセリューにウェイブはなんとも言えない複雑な心境で苦笑をもらす。
目の前のセリューは、確かに年相応の正義に燃える少女だ。
だが、ウェイブは知っている。その正義はまっすぐでいるように見えて、確かに歪んだものなのだと。
あるいはまっすぐすぎるが故に鋭すぎるのか。捕まえた盗賊をその場で”断罪”してしまったセリューのことを、ウェイブは危ういと考えていた。

(帝都はここまでやばいんだ、ってあの時思ったけど……)

ウェイブは知らない。
セリューと同様、あるいはそれ以上に歪んでいながら、その片鱗を見せなかった少女が彼のすぐ身近で侍女をしていたということを。

さらに進んだ先で、急に三人は停止することになる。

「ウェイブくん、セリューちゃん」
「ああ、見えてます」
「罠でしょうか……?」

目の前には、「池面」と胸に書かれ、まるで筋肉を誇示するかのような腕を上に曲げた体勢をしている大きな案山子。
どう考えても、この場に自然にできるものではない。誰かの手によるものであることは明白だった。

「ちょっと調べてみましょう」
「気をつけてねウェイブくん」

スン、スン、とコロが鼻を鳴らす。
セリューの帝具は魔獣変化ヘカトンケイル。普段はコロと呼ばれている生物型帝具であり、犬の姿をしている。本領はあくまで戦闘であり探知に長けているわけではないのだが……それでも人間より嗅覚は優れている。

「……グルルル」
「コロ?」

セリューがコロの様子に気づき、唸り声を上げたコロへ怪訝そうな声を漏らす。
それがウェイブの耳に入ったものだから、思わずウェイブはそちらの方へ振り返ってしまった。
怪しく見ていた案山子の、すぐそばまで迫っていたというのに。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」
「ぬおお!?」

瞬間、案山子の中から青い髪に角がはえた男が飛び出してくる。
武器らしき棍棒をウェイブにたたきつけるが、咄嗟であったにもかかわらずウェイブはグランシャリオの剣で止めてみせた。
戦闘能力はすでに完成された強さだ、とエスデスから評された彼の実力は決して並ではない。

だが、今回は不幸が重なってしまった。
振り返って隙を作ってしまったこと。咄嗟でしか受け止めることができず踏ん張りが聞かなかったこと。そして、目の前の男がただの人間ではなくコロ同様「生物型帝具」の帝具人間、電光石火スサノオであったこと。

それらの積み重ねによって、ウェイブは勢いよく吹き飛ばされる。

「ウェイブくん!?」
「ウェイブさん!?」

空に投げ出されたウェイブの体はそのまま飛んでいき、いずこかへ消えた。

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