第3話 襲撃されて死にたくない
村雨の必殺性は、条件を満たさぬ限り使用者も例外ではない。アカメが自分の手を切らないよう、整備の際はたいそう気を使っているのはレオーネも知っている。
だからアカメが、スイッチを入れる前に止めた。
そして、同時にチャンスも生まれた。
「なぜかはわからないけど、あいつはヤバイ! 撤退するぞアカメ!」
アリィが扉から離れた隙に、自分が扉へとダッシュする。
もちろん、その際にはねじ切れた自分の左手を拾うことも忘れない。
ラリアットのように腕でアカメの体をつかむと一目散に廊下を走る。このまま戦うことは絶対に危険だ、撤退すべきだとレオーネは判断していた。
「離せレオーネ」
「今回はやめておけって! 私の勘が相当ヤバイってさっきから警報鳴らしまくってるんだよ!」
言い争いながらも、レオーネは足を止めることなく窓から飛び降りると全力で離れた。
アカメもレオーネの左腕がちぎれていることに気付く。レオーネになにかあったのだと理解してそれ以上抵抗することはなかった。
彼女たちが逃げていく様子をうかがっていたアリィは、危険が去ったことを確認すると走り出す。
「今のうちに、逃げないと……」
今夜いったい何があったのか、完全に把握しているわけではない。
しかし、襲撃があったのは確かなのだ。とどまるのは危険であり、愚策。
まずは近くの警備隊詰所にむかおう。いくら夜とはいえ夜勤のものがいるはずだ。
これからの方針を決めたアリィは慣れた廊下を走り抜け、階段を駆け下りて玄関から外に出た。さすがに先ほどの襲撃者のように窓から飛び出す度胸も身体能力もなかったから。
「来た! 屋敷の玄関から外に出たぜ!」
サンディス邸よりやや離れた木陰に二人はいた。
彼らもまたナイトレイドの一員――ラバックとマイン。
今より少し前、ラバックは帝具によりはっていた糸の結界で仲間たちが離脱したこと、そして彼らから標的の一人であったサンディス家の娘、アリィに得体のしれない力がありレオーネの片腕がねじ切られることになったことを聞かされた。
「おそらく帝具だよね、それ」
「だろーね……奪えればそれが一番なんだけど、私の勘がやばいって叫んでてさ。撤退を選んだよ」
「能力のわからない帝具相手に撤退は一つの手だ。それに、接近戦で危険でも狙撃なら可能性がある」
手早く連絡をすませ、二人を除くメンバーは撤退、マインとラバックは狙撃によってアリィの殺害を狙うことになった。
アリィはレオーネたちが逃げた後様子をしばらくうかがったという時間的ロス、加えてレオーネの俊敏さに比べ戦闘力もない一般人のアリィは走って逃げたといっても速さはたかがしれている。おまけにご丁寧に窓から飛び降りたりはせずに玄関へ移動。
レオーネたちからマインへ連絡が伝わり、狙撃準備をする時間は十分だった。
そしてついに、ラバックの糸の結界に反応がかかったのである。
「オーケー、この距離なら余裕よ」
マインは銃の帝具、浪漫砲台パンプキンの引き金に指をかけた。
ピンチになればなるほど威力を増すこの帝具。威力を求めるには危険度が少ないため心もとないが、狙撃するだけなら問題はない。
スコープごしに逃げるアリィに標準をあわせ、軽く深呼吸。
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