第4話 宮殿に来たけど死にたくない
実に厄介な能力だとオネストは思う。
なにせ暗殺を企もうにも、企んだ時点で効果は発動する。しかも殺意を抱き続けようものなら、そこに待っているのは自分の死だ。いまいましいことに、ナイトレイドは腕こそちぎれたそうだが死ぬまでには至らなかったという。
(どうせなら逃げずに死ぬまで戦えばよかったものを……でしたら我々の負担が減ったというのに)
ストレスがたまってしまう、とオネストはハムをまるごと噛みちぎる。
正直その能力は実に魅力的だった。ナイトレイドを撃退できたのも納得である。
自分が手に入れられれば、と思うほどですらあった。しかし、オネストはアリィからイルサネリアを奪おうという気はさらさらなかった。
理由の一つは、もちろんアリィに悪意を抱けないこと。
彼女はすでに、イルサネリアを己の命綱と認識している。それを奪おうとすることはすなわちアリィの命を脅かそうとするも同然の行為だった。
悪意とはいうが、正確にはイルサネリアが所持者の意思をもとに、所持者にとって悪意にあたるのかを判定するというのがアリィの話した見解であった。
そしてもう一つ……
オンオフが効かない程度では済まない、イルサネリアが失敗作とされたことにも関わる理由。
(さすがに私では……おそらく適合しないでしょうねぇ)
イルサネリアには、作成された時より適合者が見つからなかった。
そして適合しなかった者の多くが、発狂することになったのだ。発狂しなかったとしても、適合することはできなかったのである。
ただ一人、アリィという例外を除いては。
なぜアリィにしか適合しないのか、考えられるその理由も聞かせてもらった。
その話もまた、オネストの頭を悩ませるものではあったのだが。
(困りましたねぇ。せっかくの強力な帝具なのですが)
イルサネリアが抱える問題。帝国を守る武具としては失敗作とされた理由。
それは……
命をかけて戦う軍人や兵士には、絶対に使うことができないためである。
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