ハーメルン
足したけど2で割らなかった
嘉納先生善人説




「あれ? 来てたんだ、アヤトくん」
「オゥ、邪魔してるぞ、カネキ。
 それとさっき風呂も借りたわ」
「ああ、アオギリの拠点だとお風呂にゆっくり入れないだろうね。そのぐらいは別にいいけど、でも今日はどうしたの?
 ニコさんがまたアオギリに出入りするようにでもなった?」
「ヤなこと思い出させんな。
 ホレ、机の上。エトからの預かりモノだ。外出るって言ったらついでに持ってけって言われたんだよ」
「ん? ああ、エトさんのお薦めの本か。ありがとう、アヤトくん」
「アン? 本なのか、ソレ?
 ったく、そんなんで俺に使いっぱしりなんてさせんじゃねーよ」
「アハハ、それはエトさんに言って欲しいな。
 じゃあ、お礼にコーヒーでも淹れるよ」
「ん、貰うわ。待ってる間は何か……ん? 何だ、このDVD? “ラ○ボー”?」
「ああ、この前レンタルして皆と一緒に見たヤツだね。
 ゲリラ戦のアクションシーンが面白かったよ」
「ふーん……“ゲリラ戦”って何だ?」
「ああ、ゲリラ戦というのはね……」





━━━━━亜門鋼太郎━━━━━



「やぁ、おはよう。皆」
「うむ、おはよう」
「邪魔するぜぇ」


「「「「おはようございます」」」」
「おっはよ~ございまぁ~す♪」


 ……什造ぉっ。いい加減にしろよ、この野郎。

 篠原さん、黒岩特等、そして丸手特等が入室なされたので、全員で立って挨拶をする。
 しかし我々のまとめ役である篠原さんだけならともかく、黒岩特等と丸手特等もいらっしゃるとは、もしかすると何か起こったのか?


 あの11区におけるアオギリの樹拠点の殲滅作戦から3か月が過ぎた。4月に入って人事異動も行われて俺、亜門鋼太郎もSレート喰種である瓶兄弟を駆逐した功績で上等捜査官への昇進となった。
 真戸さんと階級が並んでしまったのでコンビを解消してしまったのは残念だが、新たに真戸さんの娘でもある真戸暁二等捜査官とコンビを組むことになったので、真戸さんから受けた恩をアキラに返すべく奮闘中の毎日だ。

 俺とアキラのコンビの捜査対象はあのときに出会った“歯茎”。とはいえあくまで捜査対象であって駆逐対象ではない。
 言い難いことだが、歯茎にはあの有馬特等でも勝つのは難しいのではないかと判断されている。何しろ軒並みクインケの攻撃すら弾くので、流石の有馬特等でも分が悪いだろう。
 といってもあんな強力な喰種を放っておくわけにはいかないので、あのとき俺が歯茎に話しかけても殺されなかったことから、俺なら再び出会っても殺される可能性は低いだろうと考えられ、ヤツが20区にいるとは限らないが俺が歯茎の捜査を行うこととなった。
 あのときの俺は感情的になってしまい、一歩間違えれば隊の全滅を引き起こしかねない行動をとってしまった。その贖罪になればと思い、拒否しても構わないとまで言われたこの任務を受けることにした。

 ただしアキラをこの任務に巻き込んでしまったのは心苦しい。
 アオギリ拠点壊滅の波及で騒がしくなっている11区に残って掃除をしている真戸さんの元に、何としてもアキラだけは無事に返さねばならない。

 ちなみに俺とアキラが“歯茎”。篠原さんと什造が“大食い”。法寺準特等と政道が“美食家”を捜査しているが、3人の捜査対象全員がまったく姿を現さない。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/17

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析