伝承
中に入ると質素ではあるが謁見の間を意識した造りになっており奥の中央には豪華な敷物の上に胡座をかく小さな影があった。
他のオークに比べ小柄で成人した人間でも小柄に入る部類の大きさだ。
しかし見た目はかなり年老いており、オークにしては筋肉もほとんどなくシワのできた皮と所々浮き彫りになっている骨の形が見て取れた。
頭と肩には羽飾りを付け、トロールが持っていた首飾りをさらに大きく、豪華にしたものを身につけていた。
(オークメイジ……いやシャーマンか。)
そんな感想を心のなかで留めると小柄なオークはこちらを見た後、目と口を開いた。
「オオォォォ……。」
「族長!どうされました!」
ハガンが慌てて族長にかけよるとこちらに不審な目を向ける。姿を見せた途端そのようなことを言われれば当然そうなる。
「いや儂はなんともない。大丈夫だ。すまない、旅の同胞よ。儂はグルガ族の族長、グルム・グルガと申す。名を教えていただけないだろうか。神に祝福されし同胞よ。」
「私の名前は勲司と申します。部族はすでにありません。失礼ですが神に祝福されし同胞とはどういう意味ですか。」
「シラを切らなくてもいいではないですかな。クンジ殿から我らの神、パラブシオ神の気配がひしひしと伝わっておる。ここまで神の気配を濃く感じたのは初めてじゃ。」
勲司はグルムと名乗った者がなにを言いたいのかさっぱりわからないため嘘を付くことにした。
「申し訳ございません。私の部族が私が幼い頃より滅んだため自身の力や部族の詳細ついて両親から聞くことができませんでした。グルム様が感じられるというその神の気配というのを教えていただけないでしょうか。」
貸しと弱みを作ることになりかねないが、無知であることを認め、教えて貰う前に滅んだということにして情報を引き出す手段に出た。これで自分の部族のことをはほとんど教えてもらってないから聞かれてもわかりません。という予防線も張っておいた。
「そうか……まったく同じかわからぬが儂の知っていることお話しよう。」
そう言うとグルムは自分たちが崇める神のことを語り始めた。
「我らオークは元々一人の火に司る神によって生み出された種族と言われておる。火は生命の象徴であり、全てを燃やし尽くす力の象徴でもある。そんな神に創りだされた我々は多種族よりも生命力に溢れ、すべてを破壊できるほどの力を授かることができのたじゃ。しかしある時オ
ークの中にも個性が生まれた。他の者より身体が小さく力が劣る者じゃ。しかし彼らは他のオークにはない力を有しておった。我らが神、パラブシオ神と言葉を交わす力じゃ。彼らはその力を使い、パラブシオ神からその偉大な力の一旦を借り受け特別な力を振るうことができた。しかしその力を振るうには代償が必要となる。力の使用者の血じゃった。自らの身体を傷つけ、捧げた血の量に応じて力の増していったのじゃ。その力は他のオークを圧倒し、他の種族をもひれ伏せれるだけの力をもっておった。そのため部族で最も力の強い者となり、その力を有した者はオークを統べる族長になる習わしができたのじゃよ。」
グルムが語った話がユグドラシルのオークメイジが魔法を行使する設定に酷似していることに気づいた。
「パラブシオ神によって生み出された同胞は今の我らとは少し違う姿をしていたようじゃ。原初の種と呼ばれたオーク達は今の我らより神の力を強く受けたため、皆、全身が緑皮膚と鋼のような筋肉に覆われ、ある者はゴーレムを一撃で砕き、ある者は魔獣の爪牙を通さぬず、あるものは竜のブレスに耐え、ある者は大群を一瞬で無力化したという話じゃ。そしてその者たちは今の俺等のような体型ではなく、そう……クンジ殿のような姿をしておったと言われておる。」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク