第14章 チェックメイト
蓮は充実していた。
クィディッチの練習でクタクタになり、試験勉強をする。
学年末試験は、手応えも上々だ。
尤も、ハーマイオニーは答え合わせをしたがって、試験は終わったというのに教科書を湖まで持ってきていたけれど。
ハリーはゴシゴシと額の傷痕を擦って、しきりに気にしている。
「ハリー?」
「ああ、レン。どうしてかな。今日はいつもよりすごく痛む」
蓮が眉を上げた。「まさか今までずっと痛んでいたの? 罰則の日から?」
「うん。マダム・ポンフリーには一度診てもらったけどね。これって、闇に属する呪いで出来た傷痕だから、長い時間が経ってから痛み始めることもあるって説明された。痛み止めもくれなかった」
「・・・痛み止めで誤魔化しちゃいけない傷痕だからよ。マクゴナガル先生には? ダンブルドアには?」
言ってないよ、とハリーは目を瞬いた。
「今日は特に痛むのね?」
「うん。試験が終わって気が弛んだせいかな」
「・・・違うわ」
蓮は立ち上がった。「レン?」
「ダンブルドアに知らせてくるわ」
スカートが跳ねるのもお構い無しに蓮は駆け出した。
ハリーのあの傷痕は、ヴォードゥモールの呪いによって出来た傷痕だ、と考えた。
あの夜、ヴォードゥモールはハリーと蓮のすぐ近くにいた。フィレンツェが庇ってくれなかったら、どうなっていたかわからない。
ーーハリー・ポッターを間近に見つけて、あいつは興奮したはず
行き交う生徒の群れをかわしながら、蓮は校長室まで走り続けた。
ーーヴォードゥモールの感情が、ハリーの傷痕の痛みに影響するとしたら
「今日だわ」
校長室前のガーゴイルに、蓮は思いつく限りのマグルのお菓子の名前をあげた。
「きのこの山! たけのこの里! アーモンドチョコレート! 違う? ポッキー! プリングルス!」
ミス・ウィンストン? と怪訝な声が聞こえる。
「プロフェッサ・・・ダンブルドア先生に緊急のお話があります!」
蓮は、腰を90度に折り曲げて頭を下げた。
そこへ、ハリーたちが追いついてきた。
蓮がアジア人らしい、と思ったのは初めてのことだった。
必死でマクゴナガル先生に頭を下げている。
「ミス・ウィンストン、頭を上げなさい。簡単に頭を下げるなと柊子はあなたに教えませんでしたか?」
「いつも言われます。でも、どうしてもダンブルドア先生にお願いすることがあるのです」
パタパタっと、ハーマイオニーたちが駆けつけた。
「マクゴナガル先生! 僕のためなんです!」
「ポッター?」
「僕、僕のこの傷痕が今日はすごく痛むってレンに言ってしまいました。我慢出来ないこともないのに。そしたら、レンが校長先生に知らせると・・・」
「ハリーの傷痕が痛み始めたのは、罰則の夜からです。あの時、わたくしたちはユニコーンの血を啜っている影のようなものを見ました。それがわたくしたちを振り返ったとき、ハリーの傷痕が一番ひどく痛ん」
「僕、気を失いました」
ロンがハリーの肩を掴んだ。「君、そんなこと言わなかったじゃないか!」
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