第8章 ハロウィンの夜
翌日、蓮とハーマイオニーが朝食のために大広間に向かっていると、ウィーズリーの双子がガシッと蓮の肩を捕まえた。
「ちょ・・・まだネクタイもしてな・・・」
蓮の掠れ声に、ハーマイオニーは呆れて頭を振る。
シャツのボタンを上まで留めずに寮を出る蓮にも(寝坊のせいだ)レディの身支度が整っていないのに乱暴なスキンシップをする双子にも呆れるほかない。
「聞いたぜ、君がチェイサーとしての特訓を受ける話」
「新しいシーカーに新しいチェイサーだ、ウッドが第九を歌ってる」
「わたくしはまだチームに入るわけじゃないから。マクゴナガル先生と訓練をするだけよ」
双子を振り払い、シャツのボタンを留め、ネクタイを締める。
いつも思うのだが、蓮のネクタイの形は常に品良く整っている。ネクタイの締め方はロンドンのおじいさまに特訓されたというけれど本当だろうか。
「はい、杖」
最後の仕上げにハーマイオニーが蓮の杖を差し出すと、蓮はいつものように太腿のホルダーに挿した。
「ちょ! 君、なんてところに杖を挿すんだ?」
双子の一人が悲鳴のような声を上げる。
ーーあ、男子がいたわ
ハーマイオニーもまだ少し寝ぼけているようだ。
「ま、まあ、とにかくだ。マクゴナガル先生が直接指導することなんて滅多にないから、俺たち期待してんだよ。俺たちはビーターだ。これからよろしくな」
慌てて片割れが蓮のスカートのあたりを見つめているのを、片割れが無理やり振り返らせて引きずっていった。
「なにあれ」
「クィディッチチームではよろしく、っていう激励。をしようとしてあなたの太腿に見惚れたの。ね、蓮、杖は制服のローブの内側のホルダーに挿したほうがいいんじゃない?」
歩きながら蓮は「うーん」と渋い顔をする。
「なにか理由があるの?」
「ローブの内側だと、すぐに杖を抜いちゃうから」
「抜いちゃダメなの? というか、杖を出すたびに太腿をチラ見せしてしまう現状に疑問を感じない? あなたって、顔がそれだし、最近は口調もレディらしくなってきたから、あなたの太腿にすごく価値がついてる気がするんだけど」
蓮は苦笑して「簡単に杖を抜けないようにしておかないと、無意識に校則違反の呪いをかけちゃうわ」と言った。
「まあ、あなただったら、強力な攻撃呪文の一つや二つ使えそうだけど」
「ハーマイオニー」
「なぁに?」
「この杖買ったときのこと覚えてる?」
ハーマイオニーは記憶を探り、頷いた。「ミスタ・オリバンダーが作った杖じゃなさそうだったし、反応も激しかったわね」
「ええ。だから、杖の癖みたいなものがわかるまでは安心して攻撃呪文を使えないの」
いずれは使う気か、と思ったが、そういう理由なら理解できる。
その自制のために、というのなら正解だろう。
「理由は理解出来たから、身支度は部屋で済ませましょうね。男の子の前で太腿をちらつかせないように」
マクゴナガル先生との訓練は、まずバスケットの能力を確かめることから始まった。
指定された教室に行くと、マクゴナガル先生が杖の一振りで蓮の服装を変化させる。
タンクトップにショートパンツ、ナイキのバスケットシューズは、蓮が小学校でプレイしていたときのユニフォームにそっくりだ。
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