27.天領家御一行連続ロボトルデイ
何がきっかけなんだと問われれば、胸を張って無いと答える。たまには、理論とか理性とか理由だとか、そういった細々な思考のしがらみから逃れ、無我夢中で何かに取り組みたい日がある。
十一月下旬。紅葉も過ぎ、そろそろ冬服でないと厳しい季節。人の噂も七十五日、だが文化祭が終わってからまだ一カ月も経ってないため、イッキは学校で今だ指を指されて「メイドさん」と声をかけられる。
その鬱憤を晴らしたいわけではないが、今日はなりふり構わずこちらからロボトルをけしかたい。
「ソルティ、今日の散歩は長いぞ。それでも付いてくるか?」
ソルティはわぅと返事した。本当にわかっているのかどうか疑わしいが、ついでソルティの散歩もすることにした。
メタビー、金衛門、アリエルは転送済み。天領家の一子と一頭、メダロット三機が挑戦者を求めて歩む。
「あまり関係ないけどさぁ、なんだか『用心棒』や『七人の侍』を連想しちゃったよ」
「ほう? 見たことあるのか?」と食いつく金衛門。
「ないよ」
素っ気なく肩をすくめるメタビーに、金衛門はやれやれと首を振った。イッキは二人のやり取りを一顧だにしない。
公園には運が良いことにスクリューズがいた。三人は、春と夏を通じて主に着ていた服を長袖にして厚くしたような服を着ていた。暇なんだな、人のこと言えないけど。
「おーい! キクヒメ、イワノイ、カガミヤマぁ! ロボトルしないかー?」
ベンチにもたれていたキクヒメはさっと髪を上品ぶって払い、立ち上がって「おんやぁ? メイドさんじゃないですか」ととても憎たらしく言ってきた。
「おい、イッキ。たこ焼き造る機械はもうないぞ」
犬みたいに口をとんがらし、尊敬する親分の口調を真似るイワノイ。
「たこ焼きは洗濯機の中に入れて洗えんぞ」
イワノイに便乗したのか、相も変わらず物事を洗濯に例えるカガミヤマ。
「それで今日は何のようだい? あたいはもう、この前のような追いかけっこは金輪際ごめんだよ」
「そうじゃなくて、ロボトルしてほしいんだ」
「なんか企みがあってきたわけじゃねぇだろうな」
イワノイはキクヒメより一歩半前に出て、疑わしそうにイッキらを見て言った。イッキはふるふると首を振って否定した。
「違う違う。上手く言えないけど、今日は誰とでもいいからロボトルをしたくてウズウズしている。それだけだよ」
「ちょっと待ってろ」スクリューズの面子はメダロットたちも転送して、ごにょごにょと顔を突き合わせて相談した。イワノイはこちらに企みはないのかと聞いたが、企みがあるのはむしろあちらのほうである。密談を終えると、三人はにひひと口の端をちらつかせて笑いながらロボトルの条件を提示した。
その提示とはこうだ。六対三のロボトルの場合、パーツを一つ譲る。三対三の通常ロボトルの場合、負けた側は相手にパーツ一セット分を譲るという無茶苦茶なものだ。
「ただ普通にするってぇのは面白くない。闘いはちょーっとシリアスなほうが燃えるもんよ。どう、男なら受けて立つでしょ?」
腕を組み、ドヤ顔で決め台詞のように言い放つキクヒメ。迷っているとき、救いの手が差し伸べられた。
「お待ちください。ロボトル協会ではそのようなロボトルを認めておりません。が、イッキ選手とメダロットたちが良しとするなら、そのロボトルを認証します」
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