28.招待状
――見つかったか? よし。なら、それをちゃんと送ってくれ。俺は今、虜囚同然の身で動けないからな。世話をかけたな兄弟――
…………………………………。
――もう少しの辛抱だ。それまでは、とにかく礼儀正しくへこへこするしか手立てはない。今しばらくは辛抱のときだ。案ずるな。あれは卑小な者だが、罪の意識に駆られている。口を割るようなことはないはず。…絶対とは言い切れんが――
――ああ、そうだな。いよいよ、あれらに一泡吹かせるときがきた。目にものを見せてやろうではないか!我々の力を奴らにな。明るく希望の象徴である元旦は、絶叫と炎上で絶望に変わる――
――意味?…おかしなことを。あえて言えば、祭りを盛り上げるためのちょっとした余興のようなもんだ。問題はない。今度着る予定の「体」。あれを着れば、負けるわけない。それに、だ!負けっぱなしで引き下がるのは悔しくないのか?兄弟?私は悔しいし、憎い――
――電波に異常がでるかもしれないので、通信はこれまでだ。互いの武運を祈ろう――
*——————————————————*
『いっええぇーーいぃ!!』
画面越しから、ド派手に逆立った赤髪の男の子が大股をひろげ、裂けんばかりに大きく口も開けて白い歯をちらつかせ、大声を上げ、取材陣の前で元気一杯に飛び跳ねていた。彼の後ろにはKBT型カンタロスが控えていた。
その男の子の左右にいる、右側の前髪で目を隠した太っちょの男の子と丸眼鏡の男の子、左の背が高い年長の男の子は呆れた様子で赤髪の少年の挙動を見ていた。
画面に写っている彼らはカメヤマ小学校メダロット部の部員たち。カメヤマ小学校のメダロット部は、強さの凋落が激しいメダロット部として有名だ。ここ最近は、それなりに強い部として有名だが、二年前までは最弱メダロット部として有名だった。
N○Kの取材特集で、今日は山奥にあるカメヤマ小学校が取材対象だったが、今写っているメダロット部員四名の内、背の高い部長である男の子以外の三名は、ヘベレケ博士が開発した例の飛行物体の試験飛行に招待されたのだ。
もっとも、画面越しに居る少年漫画に出てきそうなド派手なスタイルの少年は、テレビの取材が来た事自体が嬉しいようであり、盛んにカメラの前で飛び跳ねて、スタイルの良い美人の先生と部長である少年に一喝されたシーンが僅かに映っていた。
はあと、イッキは肩を落とした。また招待されなかった。一回目は外れ、二回目も外れた。
メタビーたちに許可を貰い、パーツを売った金(八百円程度)で三枚のハガキとペンを買い、それで一回目から三回目までの試験飛行にそれぞれ応募したが、今の時点で二回外れた。チャンスは後一回。だが、確立はゼロに等しい。
試験飛行のニュースはほんのちょっとニュースや新聞で取り上げられた程度だが、予想以上に反響は大きく、三回目の試験飛行、飛行船内で初の日出を迎える一般招待の最終試験飛行日には、莫大な量の応募が寄せられた。
莫大な量とは、どの位になるか想像もつかない。恐らく、東北地方に住むママの親類縁者や被災地跡近くに住む友人から送られた、果物や季節の味覚を詰めた数個の箱では収まりきらない量の手紙が送られてきたのかもしれない。
そのママは、友人と電話で通話していた。その友人は以前、イッキがメダロッターズに行き、例の暴走メダロット事件でメタビーの関係にひびが入ったとき、チドリがイッキを動かすために話した、あのお弁当の例え話に出てきた例の友人だ。二人は世間話に話を咲かせていた。
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