2.ファーストロボトル
起動してから二日、メタビーはそれなりに家族の一員として馴染み始めていた。
念願のメダロットを手に入れてご満悦のイッキ。ただ、一つ不満を述べれば、メタビーは少々生意気すぎる。
一応、両親の前では務めて礼儀正しいが、僕の前ではぐうたらと寝転がって、漫画を読みふけったりする。あまりにも冷めた性格はどうかと思うが、できれば、もうちょっと落ち着いたところが欲しかった。
まだ、たった二日しか経ってない。そうすぐに、全く見も知らぬ者たちと暮らす環境に馴染める者はいない。
時間が経てば、メタルビートルことメタビーの別の一面が垣間見られるはず。
今日、イッキはメタビーを連れて、毎週足繁く通っているメダロット研究所に行く。メダロット研究所所長、アキハバラ・アトムことメダロット博士に自分のメダロットをお披露目するためだ。
今日、イッキは俺をとあるところに連れて行くと言った。
とあるところって何だ? と聞いても、イッキは答えをはぐらかした。着いてからのお楽しみというわけか。
道中、イッキは女の子と出会った。傍目から見ても、イッキの友人だということは理解できる。女の子横には、女学生のような姿をしたメダロットが付き従っていた。自分以外のメダロットは初めて見た。俺の視線に気付いたのか、その子は俺を見てお辞儀をしたんで、俺もつられてお辞儀を返した。
「あっ! イッキもメダロットを買ったんだ」
少女は初めて私の存在に気が付いた。イッキは鼻高々に紹介した。
「うん、そう。名前はメタビーっていうんだ。かっこいいだろ」
「メタビー!? あんた、大胆な名前を付けるわね」
女の子は俺を見て微笑んだら、自らと、自らが所持するメダロットの名を告げた。
「私は甘酒アリカ、ジャーナリスト志望の小学三年生。で、こっちはSLR型メダロット・セーラーマルチことブラス」
「よろしくね、メタビーさん」おさげ頭で高校二年生の女子をイメージしたメダロットがぺこりと頭を下げた。
「おう、よろしく! 俺、こいつの家で居候させてもらっているメタビーっていうんだ!」
へぇーと呟いて、アリカという少女は俺とイッキを見比べた。
「随分なやんちゃ坊主ね。イッキ、あんたにゃ手に負えないんじゃない」
「な、何だよ。人がどういうメダロットを持とうが、人の自由だろうが」
「それもそうね。ところであんた? メダロット研究所に行くんでしょ?」
イッキは慌ててアリカと名乗った女の子の口を塞ごうとしたが、もう遅い。
「メダロット研究所?」と俺は呟いた。
アリカは口を塞ごうとしたイッキの手を払うと、俺にメダロット研究所の説明をしてくれた。
簡潔にまとめれば、メダロット研究所はメダロットの生みの親である「メダロット博士」と呼ばれる人がいるとのこと。
イッキが俺に目的地の名を告げなかった訳は、メダロット研究所とメダロット博士なる人物を紹介したとき、俺がどのような反応を見せるかという期待。そして、そのことを説明できる一種の優越感に浸れる自分。つまり、これら二つの目的があるから、イッキの奴は俺に目的地を告げなかったというわけか。
当のイッキは舌打ちしていた。
「ちぇっ。メタビーを驚かそうと思ったのに」
「ねぇ、イッキ。私も付いて行っていいでしょ?博士から、何かネタになるような話が聞けるかもしれないし」
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