31.裏切り者たち
少し考えて思ったが、そもそもスクリューズはどうやってここにくるのだ? その前に、自分たちもそうだが、スクリューズがこの場所を知っているのか? 否、知っているはずがない。更に言えば、スクリューズの三人がこのダクトの上まで来られる保障や可能性など無きに等しい。
あの三人の腕を否定するわけではないが、どうやら、あてにできなさそうだ。携帯もなくて連絡手段もなし。メダロッチでメダロットを転送するのもありだが、それはあくまでパーツとティンペットを送るだけで、メダルまでは送れない。殻を送っても、肝心の中身が無ければ意味がない。
体育座りで考えこむが、一向に良いアイデアが思い浮かばない。
「なあ、このパイプやらコードを破壊するのは。駄目だよな」
メタビーがイッキ同様、体育座りの姿勢で言う。声を揃えて駄目だと言った。この機械類や線などを無闇に引きちぎったりすれば、ロボロボは一巻の終わりだろうが、自分たちと人質も同時にしまいである。
花園学園の状況とよく似ている。一つ違うのは、コウジやアリカといった助けとなる他に助けとなる存在がいないことだ。
「とりあえず、もう少し上へ行こう」
金衛門の提案で、一同は行ける限りのところまで行った。もっと狭いが、多少灯りがあるため、互いに見えないこともない。金衛門の行動は正しく、五分と経たないうちにロボロボ団が下を通り過ぎて行った。索敵パーツの存在もあり、迂闊に動けない。イッキは静かに右手を挙げて、人差し指と中指と薬指と小指を伸ばした。
「選択肢は四つだね」
アリエルだけ頷いた。これは、益々花園学園の状況と酷似している。もう一つ違う点を挙げれば、陸ではなく脱出至難なお空にいることだが。
一つめの選択肢は隠れること。ひたすら、ゴキブリのように地を這い、天井を這い、危機が去るまで隠れてやり過ごす。
二つめの選択肢は逃げること。隙を見て、パラシュートなり飛行パーツで窓やどっかから飛び降りるなりして、フユーンから逃げて、地上に状況へ伝える。
三つめの選択肢は行動あるのみ。もちろん、真正面から正々堂々戦うのではなく、上からミサイルなどの火薬系パーツでまとめて片付けたり、奇襲をかける。というより、この状況で相手に勝つ見込みがあるとすれば、それしかない。通信機器を奪い、地上へ連絡する案を金衛門が出した。
そして、四つめの選択肢は一番嫌だが無難かもしれない選択。素直に姿を現して大人しく捕まること。自分達が下手に動くことにより、人質に何らかの被害が出る恐れもある。もしくは例えば、出て来なければ人質がどうなっても知らんぞ、という感じに脅してくる可能性も十分ありうる。自分が犯人側だとしたら、多分、そう言うと思う。
アリエルが小声で話す。
「臆病者と罵られても構いません。けど、私としては、逃げるか。大人しく捕まるのを勧めたいです。下手に抵抗したら、イッキさんや捕まった方達がどうなるか分かりませんもの」
そのとおりかも。ロボロボ団は人質をないがしらにしたりはしないだろう。大人しく姿を現し、捕まる。そして、しばらくして、解放された後、皆でそれを思い出話の一つとして語る。水に食料を補充でき、子供だから寝たい時に寝させてもらえるかもしれない。子供なんだ。ちょっと選択に失敗しても、大丈夫。
しかし、そう思いつつも、心は強く否定していた。自分で考えておきながら、一番と四番の選択肢を拒んでいた。
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