3.一人の日常
俺がこの家に住みついて今日で一週間。
チドリママは買い物、ジョウゾウパパは仕事、イッキは学校。んで、俺は留守番。
イッキの両親には義理を通して、一応、片付けにソルティの餌をやっておいた。
この一週間の間に、アリカとの初ロボトルを含めて計四回ロボトルした。ぶっちゃけ、本音を漏らすと自信が無かったが、首の皮一枚のところで三回のロボトルには勝利した。
イッキの指示もそうだが、俺の射撃の腕もまだまだだな。
やることねぇから、俺は漫画を読んだ。読んでいるのはイッキママの少女漫画だ。女向けの読み物なんて、と見下していたが、読んでみるとページをめくる手が止まらない。
まじになって、悲痛な主人公の恋が叶うことを応援した。若干のご都合主義は良いとして、純日本人のはずなのに髪が金髪だったり目が青や紫色の人物などがいた。日本人の舶来コンプレックスというやつだな。そこら辺はつっこまないよう心掛けた。
わん、わん!
ソルティが散歩を催促する。ママは、ソルティが散歩を催促したときに限り、外出をしても良いと言っていた。一日中漫画を読んでいるのもあれだし、ちったぁ体を動かすか。
適当に戸締りをしてから、しっかりと施錠した。カチリと良い音を立てたから、多分、ちゃんと閉まっているはず。
釘からソルティを縛る綱を解き、俺は散歩に出かけた。
ばったりと、お隣の甘酒おばちゃんと出会った。
「あら…あなた。確か名前は…」
「メタビーです」
平素に名前を告げた。
「ああ、そう。イッキ君のメダロットだったわね、確か。犬のお散歩、よね。どう見ても」
「はあ…。ママから留守番を言われたんですけど、ソルティが散歩を催促したら、ちょっとぐらい出掛けても良いって言っていたから」
「あら、そう。じゃ、お散歩を楽しんでいらっしゃいメタビーちゃん」
甘酒おばちゃんは、我が子に話かけるように俺をメタビーちゃんと呼んだ。チドリママが俺のことを話す際に、必ずちゃんづけするらしい。お陰で、ここら辺では俺のことをちゃんづけで呼ばないのは精々四人ぐらいしかいない。
構やしないが、この前イッキと同い年ぐらいのガキから「よっ! メタビーちゃん」と小馬鹿にされたときは、そいつにミサイルをぶち込みたい衝動を必死に堪えた。
俺はソルティと国道に出た。信号に差し掛かる。赤信号だったので、待つ。車道側の信号が青に替わったとき、俺より一メートル横に離れた奴が、歩道側はまだ赤にも関わらず歩き出した。
イッキにそのことを聞いてみたら、イッキは無視するに限ると答えた。僕とメタビーが注意したところで、ああいう大人は無視するか、生意気なガキとガラクタだと逆切れする。専らこの二つのパターンが占めており、素直に聞く耳持つ奴は稀らしい。
子供に注意されても恥ずかしいと思わないなんて、ある意味大人じゃ下の部類に入るな。なよなよしい奴だけど、少なくとも、イッキはまだそういう奴ら何かよりかは百倍ましだな。
この御神籤町には、広い河原に面した歩道がある。
俺はここに来ると、精神が高揚する。何というか、走りたくてしょうがなくなる。俺と一頭は無我夢中に駆けた。機械の体だが、一種の爽快感というものを感じた。途中、ソルティはもう勘弁してくれと、息を切らした。情けない犬だな。でも、これ以上無理をさせるのも可哀想なので、俺は走りたい気持ちを抑えて、緩めな歩調にした。
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