11.メダロッ島(初日・二日目)
波にゆらゆら五時間、天領一家の居る部屋からでもメダロッ島の島影が見えた。
メダロッ島はシーズン毎に客を分けていて、天領家が選んだ夏休み第一シーズンでは、スタッフを含む総勢一二万人もの大衆が、最小二日から最長一週間メダロッ島に滞在する。夏休みのシーズンでは、外国人のゲストを招いた大規模なメダロットの大会を開催するので、毎年、十万人超えは当たり前。
シャーク号が港に着くまで、子供たちはメダロットとともに甲鈑や船内を探索し、親はのんびりと船室で寛いだ。一時間ほど前から小雨が振り出さしたので、イッキは携帯ゲーム機に興じ、光太郎は何となく漫画を手に持ち、ロクショウはイッキがママに持たされた十五少年漂流記を読書、チドリは小雨が降る四十分ぐらい前から仮眠していた。
そうして時間を潰していたら、船内アナウンスが後二十分で船は港に着くと放送した。
チドリはむっくりと起き上がり、船室内の洗面付きトイレで洗顔した。チドリはイッキに下船の支度をするよう伝え、自身は身近な物をバッグにまとめた。
ぽー! ぽー!
シャーク号は出港するときと同じく、二回汽笛を模した機械音を鳴らし、船内アナウンスは残り五分で港に着くことを告げる。
天領一家に甘酒親娘は下船口近くのカフェで荷物を置いて待機していた。
体感からして船が止まるのに気づく、イッキは何となく外を見やる。中世ヨーロッパの城下町城門を思わせる作りのメダロッ島遊園地入場口が聳え立っていた。チドリは目覚めのコーヒー代金の支払いを手早く済ませ、天領一家は一拍遅れて甘酒親子の背を追う。船上からでも、既に膨大な人間が港やメダロッ島で動き回る姿が確認できる。
イッキたちが泊まる予定のホテルは、港から海沿いを歩いて二時間ほどのところにある。歩くには遠いので、各施設から送迎用バスが送られる。
混雑した中ではぐれぬよう、チドリとイッキは互いの手をしっかりと握り合った。移動の邪魔になるかもしれないので、ロクショウと光太郎はメダロッチに収納、おかげでイッキはロクショウに割り当てた荷物を持つことになり、重いから早く送迎バスに乗れることを願った。
「メダロッ島タカサゴホテルお泊りのお客様の方々はいらっしゃいませんか? タカサゴホテル送迎バスはこちらです!」
四十代の男性が人混みの中、ざわめきと各施設の添乗員に負けぬぐらい大声を張り上げていた。
二組の親子は群衆を掻き分けて、送迎バス停まで何とか行けた。急ぎ、大荷物だけをバスに詰め込み、イッキは肩が楽になれた。
二組の親子が乗ってから数分後、添乗員の男性が人数を確かめると、バスは発射した。移動の間、イッキは雑談を交わしつつ、シャーク号と港、そしてバスからの景色を眺めた。
十五分ぐらいで、バスはタカサゴホテルに到着した。タカサゴホテルは四階建ての和洋折衷な建築物。天井は屋根瓦、下は薄い水色と賑やかな点々模様が塗られた近代的なビル。
パパが四月頃から、ついでに甘酒母子の分も予約していたホテル。書入れ時に合わせて、ホテルはシーズン対応の大サービス格安宿泊期間を設けた。本来、一週間の宿泊料は親子二人(メダロットは荷物扱い)で十一万二百円もするが、サービス期間に付き、家族学生割引で六万円である。パパは会社が用意したところで眠るから、ジョウゾウパパの宿泊代については実質ただである。
その分、食事やお土産に宴会で元を取ろうという魂胆がある。
雨が本降りとなり、ホテル前の海辺で遊ぼうにも遊べず、ロボトルもできない。天領一家は三階の305号室、甘酒親子は一つ隔てた307号室。まずは荷物を置いた。外は予報どおりの雨。どうせ濡れるから、イッキはすぐにでも海水パンツを履いて海に行こうとしたが、チドリは波が荒れているので危険だと止めた。
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