14.メダロッ島(四日目)
メダロッ島ロボトル大会。二日前の試合で人数は絞られたので、今日は四回戦から決勝戦まで執り行う。
また、四回戦からの追加ルールで最大三体まで使用可能となる。向こうが一体使用に対し、同意さえ得られれば、参戦最台数の三体まで使用できる。
イッキの相手、ジョー・スイハンは一回戦ではニンニンジャ。二回戦はティーピー。三回戦はサムライを使用したことがアリカの情報で分かった。ジョー・スイハンは、高速型の格闘タイプを好んで戦うスタイルのようだ。主力機がネイティブアメリカンをモデルにしたティーピーなのは納得できるが、他二機がニンニンジャとサムライとは、随分日本的に思えた。
取材したアリカによると、ジョー・スイハンは親日派らしい。
十年前、日本で開催された世界大会に参戦したのがきっかけで。以来、日本文化に興味と憧れを抱くようになった。もう一つ、父親のジャー・スイハンと共に参戦した際、準決勝で戦ったとある日本人メダロッター、名は「ヒカル」という自分と同い年の人物との再戦を果たす目的もあり、大学研究論文作成のついでにメダロッ島の大会に参加した。
アリカが身近にいる同姓同名のヒカルのことを告げたら、ジョー・スイハンは一笑に付した。
——まさか、ヒカルをそんな不真面目なコンビニ店員と一緒にしないほうがいい。
否定の理由に、イッキとアリカは妙に納得してしまった。あのおさぼりヒカル店員がとてもじゃないが、魔の十日間事件を解決した伝説的なメダロッターとは到底思い浮かばない。
ロクショウ、光太郎と相談した結果。装甲が薄いティーピー、ニンニンジャはロクショウが。装甲は厚いが、二機と比べたら幾分か鈍間なサムライは光太郎が相手をすることにした。
しかし、相手が三体を使用してくる可能性は十分に有りうる。
「使わせればよい。相手が量を持って攻めるならば。こちらは、一瞬の決断と知恵で対処すればいい」
大胆にも、ロクショウはこう言った。
だが、アリカから聞いた感じ、ジョー・スイハンはそういった戦い方をあまりしなさそう。こちらが一対一を望めば、応じてくれそうだ。
選手控え室。初日は人種の坩堝と化していたロッカールームも今や残すところ十六人となり、賑わう外と打って変わって、静寂だった。
ジョー・スイハンは目を閉じ、十年前の記憶を遡っていた。
叔父がスポンサーとなり、私と父はメダロットの研究に専念できた。その叔父の工場が経営難に陥り、閉鎖されるかもしれない。叔父の経営する、メダロットを含む部品請負の工場により地元は潤っている。
叔父の工場が潰れれば、研究資金が乏しくなるだけではない。地元のインディアンたちの就職先が失われることにほかならない。
私と父は叔父が経営するメダロット工場を救うため、日本のメダロット社に却下されたオリジナルメダロット・ティーピーを使い、世界大会に出場した。
この大会で上位成績を収めれば、デザインがダサいという理由でメダロット社が却下したティーピーの実力が認められる。ひいては工場の宣伝にも繋がり、一定数の注文が入れば、工場と地元は救われる。
今だから明せるが、攻撃しかできない機体三機で勝ち抜くのは、非常に辛かった。
だが、私と父であるジャー・スイハンはメダロットに一生を捧げることにした馬鹿。今ここで、その知識と持て余した時間を有効利用しなくてどうする。毎度苦戦を強いられるも、育て上げたメダルと完成された親子のコンビプレイで勝ち進んでいった。
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