ハーメルン
ナルトくノ一忍法伝
3『異なること同じこと』

 

 ナルトの考える強くなるための最も手っ取り早い方法は、強い者に教えを乞うことだ。
 そして、今このときならば、自分が知る限り最も強い忍びが木の葉に存在している。
 ならば、迷うことなど何一つない。





 荒い息を吐く。目の前には三代目が涼しい顔をして、立っている。きつく睨みながら、足に力を込める。
 飛びかかるようにして、ナルトは三代目に向かっていった。

「ほれ、そんなものじゃ一生届かんぞ」

 ひらり、と身をかわされる。動きは速くないのに、当たらない。ナルトはムキになりつつも、縦横無尽に体を動かして翻弄する。三代目は涼しい顔でそれを向かい打つ。

「チャクラを集約しろ。動く瞬間に足で爆発させるイメージだ」

 激しく動き回っているナルトを外周にして、その中心からほとんど動かず、三代目は淡々と指摘していく。

「そら、もっと速く出来んのか」
「むき―――!!」

 ナルトはサルのように吠えると、再び飛びかかっていく。飛びかかってはかわされ、飛びかかってはかわされ、それでもめげずに何度も何度も何度も、しつこくしつこくまとわり続ける。
 蹴りも突きも、投げも、クナイも、全てを使う。忍の組手だ。ただし得意な術のはずの影分身は使っていない。それだけを含めなければ全力も全力。
 
 荒い息を吐きながら、肉体を酷使する。
 
 チャクラの吸着と反発を利用した基本的な肉体操術。それの練習なのだが、今は下忍にすらなっていない忍者のナルトと、里の頂点に位置する火影とではまるで組手と呼べる代物ではなかった。
 しかしナルトは諦めない。ここしばらくの特訓に付き合っていた三代目火影は、それを理解しているのだろう。厳しい言葉と視線を投げかけているが、ナルトがめげる心配は一切していない様子。
 ナルトは目の前以外の事には関心を払わずにただ真っすぐに向かっていく。
 目標に向かって単細胞的に進むだけではなく、考えることも誓ったのは間違いない。しかしナルトの本質はやはりこの愚直さ。疲れている今は、急ごしらえの思考を扱う余裕などなく、ただ体の声に従って動き続ける。
 足にチャクラを篭め、地を抉りながら突進をくりかえす。それを絶えずに続けてきた結果、周囲の地面はすでに平坦な部分がほとんどなくなっていた。
 その一つに、三代目の足がかかり、動きが止まった瞬間をナルトは見逃さなかった。
 最後のチャンスとばかりに今日最速の突撃をかまし、そしてアッサリと放り投げられた。

 ―――ちくしょーっ。

 地面を転がり、そしてそのまま停止。三代目はその様子をしばらく見ていたが、ふと、構えを解いた。

「……ふぅ。まあ、そろそろ休憩にしようかの」

 額から流れる汗をぬぐいながら三代目はそう告げた。

「な、なんだじいちゃん……、もうへばったのかよ。だらしねえ、オレってばまだまだやれるぅ………」

 ナルトは既に地面に仰向けにぶっ倒れながら、喘ぎ声のような声でなんとかそう言った。

「分かった分かった。お前のその根性だけは認めてやる」

 三代目の声には多分な呆れが含まれていた。
 手近な丸太の上に腰かけて、竹筒の中の水を呷る。その息は多少上がってはいるもののナルト程ではない。

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