第10話:番外2
そろそろクレマンティーヌに連絡しよう、モモンガはそう思った。
彼女と戦い、制圧し、竜王国へ使いに出してからしばらく経っている。何度か連絡を取り消耗品の補給は行ってはいたが、最近は忙しくて少し間が空いてしまった。
(あんなのでも一応部下みたいなものだし、定期的に様子をみてやらないとな)
彼女の現状をリアルに例えれば、他社に出向させて24時間自分の判断で働かせているようなものだ。モモンガとしては色々と気を使ってやっているつもりではある。
『クレマンティーヌ、聞こえるか?』
伝言を起動して声を掛ける。繋がった感触はあったのだが、何故か反応がなかった。
『……クレマンティーヌ、寝ているのか?』
『……モモちゃん?』
『だからモモちゃんは止めろと……まあいい、手が離せない状況か? ならば時間を置いてから連絡しなおすが』
『モモちゃんモモちゃんモモちゃーんっっ!!!』
(!?)
キーン、と鼓膜を突き破るような大音声がメッセージを伝わりモモンガの脳味噌を揺らす。骨だから(略)
『な、なんだ! 別にそんな大きな声で言わなくても聞こえている!』
『もうやだぁー! 毎日毎日ビーストマン狩りで飽きたよぉー!』
『はあ!?』
あんまりと言えばあんまりな発言に、モモンガの口があんぐりと開く。仕事を飽きたと上司に愚痴るのも十分あれだが、その内容が気軽に残酷で物騒だ。
『お前……一応給金や物品支給をしてやっているんだから多少は遠慮しろよ……』
『だってぇー、流石に私でも毎日毎日おーんなじ面を作業みたいに狩ってたら飽きちゃうしー……あーあ、たまには人間も狩りたいなぁー』
『やめろ』
いかれた発言にモモンガは頭を抱える。協力者としての彼女は本当に手間がかかってしょうがない。とはいえそこそこ付き合いは長いし今更首切りというつもりはなく、だからこそ頭を抱えるべき問題でもある。
(とはいえ確かに休暇は必要だな)
竜王国の現状は思った以上に貧窮しており、クレマンティーヌを休ませるという事は多数の死人を出すという事でもある。彼女にはリング・オブ・サステナンスを渡してあるので休憩・睡眠・飲食の必要はないが、かといって精神は疲弊する以上24時間働かせるつもりは無かった。竜王国の事情をよく調べずにクレマンティーヌ一人送ったのはモモンガの不手際と言える。
『ふむ……分かった、休暇については考えよう。まあすぐにとはいかないだろうがな』
『わーい! モモちゃん愛してるー♪』
『言っておくが休暇が取れても騒ぎや問題を起こしたら即刻処分するからな?』
『分かってるよー、疑り深い上司様だねー』
『……ばれなきゃ何してもいいと思ってないよな?』
『……』
『おい返事しろ』
メッセージを切り、腰かけていた椅子に背を預けて思考に埋没する。
(クレマンティーヌの代理か……俺がアンデッドを作れば一発なんだが、こちらの正体と手札は出来るだけ隠したいから却下だな)
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