第3話
「それではモモンさん、次がありましたら宜しくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
お互い軽く手を上げて、それぞれの宿へと向かう為に別れた。
効率良くモンスター討伐を成したモモンガと漆黒の剣は、その日の内に冒険者組合へと帰ってきた。おかげでガゼフから受け取っていた報酬を除いても、財布の中身はかなり潤っている。
(漆黒の剣は当たりだったな)
宿への帰路につきながら、モモンガはそう思う。お人よしと言える程に人が良く、未熟ながらも最低限の強さと連携を持つ彼らにかなりの好感を抱いていた。
彼らが組合に着いてからもモモンガの活躍を事細かに話してくれたおかげで、記録を取っていた受付の印象も悪くない。もしかしたらランクアップも早々に決まるかもしれないと考えていた。
(彼らとはこれからも懇意にしていこう。チームに入るつもりは無いが、最低限横のつながりは欲しいしな)
少々ドライな考え方ではあるが、アンデッドとなり人への親近感を失ったモモンガからすればかなりの好印象と言える。今のところモモンガの脳内ランキングとしては、『カルネ村の人々≧ガゼフ>漆黒の剣>その他』といったところであろうか。
特に急いで帰る用も無い為、露店を冷やかしながらぶらぶらと帰路につく。その耳に、悲鳴のような叫びが届いた。
「アンデッドだ! アンデッドの大群が攻めてきたぞ!」
(……つくづくイベントが多いな、この世界は)
モモンガは来た道を戻り走り出した。
それは絶望的な光景だった。
数十、いや数百を超えるのではないかと思わせる程のアンデッドの大群。それ等の歩みは決して速くは無いが、途切れず攻めてくる不死の集団は、分かりやすい危機の襲来だ。
「ペテルさん!」
街の外壁にたどりついたモモンガは、見知った顔に話し掛ける。
「モモンさん! 良かった、ご無事だったんですね!」
その男はまず此方の心配をしてきた。他にもいた漆黒の剣の面々も、厳しい面持ちは残すも微笑んできた。
まず自分の心配をしたらどうだ、とモモンガも状況に合わず朗らかな気持ちになる。
「状況は?」
「分かりません。守衛が言うには、墓地から何の前触れもなく大量のアンデッドが攻めてきたそうです。冒険者組合も手が空いている者全てに防衛参加を依頼しています。そもそも数が多すぎて打って出る事もできません!」
話しながら、お互い近寄ってきたアンデッドを斬り飛ばす。漆黒の剣だけではなく、周りを見渡せばどこもかしこも戦闘中だ。
今は皆どうにかなっている。だが、視界の先には数えるのも馬鹿らしくなる程のアンデッドの群れ。このまま続ければどうなるか等、子供ですら予想できる展開だ。
「……皆さん。これを」
モモンガは、無限の背負い袋から幾つかの武器を漆黒の剣に渡す。
「これは……?」
「すげえ、銀の武器かよ!」
「なかなかの魔力も感じるのである」
「この杖も、かなりの逸品じゃないですか」
戸惑いを隠しきれない面々。
「とりあえず貸し出しますので、これで凌いで下さい。それと治癒のポーションも幾つか。これは返さなくていいので、好きに使って下さい」
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