ハーメルン
戦姫絶唱シンフォギア ~Gungnir Girl's Origin~
EPISODE9 邂逅
深く長い溜め息が一つ、司令室に漏れる。
「それで、まだ何の手掛かりもなしか……」
「分かっていることは最後の反応がここリディアンの近くでロストしたってことぐらいよねぇ……」
深夜の強行軍による一斉調査から一週間以上が経ったが、あれから一度も反応が現れることは無く、未だ進展の無い謎の聖遺物の調査は最早暗礁に乗り上げているといっても過言ではない状況であった。
ここのところの労働環境はすこぶる悪く、自宅に帰れず徹夜は当たり前、食堂でご飯を食べる時、各々に宛がわれた部屋備え付きのシャワーを浴びるときやトイレ休憩、ほんの少しの仮眠といった時間だけがオペレーターたちの心の癒し、よりどころであった。現場の情報収集班や情報解析班、聖遺物の研究員たちも総出で働き詰め、取りあえずの食事は摂っているものの、過労と睡眠不足に溜め息が止まらない。
それは弦十郎や緒川慎次も例外ではなかった。むしろこの二人は、現在進行形でグロッキーな二課オペレーターたちよりもさらに酷い過ごし方をしている。
弦十郎は目頭を押さえて揉み解しているところであって、また普段そういった姿を人には見せない緒川慎次も目の隈が凄く、その片手にあるコーヒーが手放せない状況だ。しかし、オペレーターたちより酷い生活であるのに、そんな風に見せないのは普段から身体の出来が一般人と違うからなのだろう。傍から見れば少し体調がよくなさそうだな、ぐらいにしか見えないはず。
きっと復活も早い。
――人間、極めればここまで強くなれるのかもしれない。
……なお、桜井了子だけはちゃっかり睡眠をとっていたりもするが。
閑話休題。
モニターには反応が最後にロストした地点である、リディアンと生徒たちの女子寮の間にあり、リディアンにほど近い商店街の地図が出されていた。
調査で分かったことは、当日の深夜に大きな物音がしたってことぐらいで、それ以降有益な情報は入ってきていない。
何かが上から降ってきたという痕が残っている現場状況から恐らく謎の装者が出した音かと思われるが、その姿に関しては町の人も知らないみたいで難航している。
また、その調査も表立っては出来ない事なのも難航している一つの原因にもなっていた。
……商店街の人たちは誰もが口が堅かった。
「それだけでも大分違うものがあるが、こうも我々二課が苦戦するとは……」
「そうよねぇ、姿を確認できていないんじゃあ探しようもないわよね。どっかに都合よくノイズが出現してくれさえすれば、また現れるかもしれないんだけど……」
「了子さん!縁起でもないこと言わないで下さいよ!確かにそんな可能性が無いわけじゃないですが、しかし!」
「うーん、それもそうね、悪かったわ朔也ちゃんっ!」
「うぐっ……」
きゃるんと軽く返され、全然勝てないとわかった藤尭朔也は諦めてデスクへと向きなおす。
人が疲れているのにこの人は何でこんなに元気なんだ……、と内心ぼやく。
藤尭朔也は桜井了子が十分すぎるくらいの睡眠をとっていることを知らない。……なお、自分が一日平均1時間半寝ているその5倍以上毎日寝ていて健康的に過ごしているなんてもっと知らない。
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