ハーメルン
戦姫絶唱シンフォギア ~Gungnir Girl's Origin~
EPISODE7 悲痛な嘆き、未だ晴れることなく
私がふらわーのおばちゃんの家で目が覚めてから二日目、動かせばその都度激痛が走り鉛のように重かった身体は少し怠いかなと思えるくらいにまでは回復した。
しかし、まだ満足に動ける状態ではなく歩けないことはないが自分一人で歩くのは少々キツイ。
ただ、体内のガングニールの破片が過度に侵食が進んでいたころに比べればなんてことないし、恐らく安静にしていれば明日には完全に回復できる気がする。無理をすればシンフォギアを使って戦えるかもしれない。
実はあれからおばちゃんにはこれ以上の迷惑は掛けられないと、無理してでも出て行こうとしたのだけれど、「怪我人を見捨てて見て見ぬふりをすることなんて寝覚めが悪くて仕方ないからね、せめて動けるくらいにまでに回復するまではここに居なさい」と、逆におばちゃんに説得されてしまった。
その間、食事はずっとおばちゃんに食べさせてもらっていたし、トイレに行くときはそこまで支えてもらいながら移動したし、お風呂には入れないからタオルで身体を拭いて貰っていた。お好み焼き屋さんの営業もあるのに、まるで介護紛いのことをさせてしまって非常に申し訳ない。
そして今は西日が傾き夕方に差し掛かっていて、おばちゃんに身体を拭いて貰っているところ。
「……本当に、おばちゃんは何も訊かないんですね」
私からはよく知っている人物ではあるが、おばちゃんからしたら初対面に過ぎないただの他人だ。
前に一度問いかけたときにはお茶を濁されたことをまた私はおばちゃんに再度問いかけた。
「そうねぇ、一体何から聞いたらいいかしら?」
背中や腕に首筋、たまに前に来て胸やお腹をお湯で絞ったタオルで丁寧に拭きながらそういうおばちゃん。
私の身体は正直言えば一般的な人よりも傷が少なくない、先日のことで青アザだってあるかもしれない。
そして一番目立つ胸の古傷、それは生々しい傷痕を残していてただの怪我では説明のできないものだ。
しかし、おばちゃんは一切そういう事を訊いてこないし、訊いてこようともしない。
先ほどの問いかけに私が答えずにいるとおばちゃんが話を続けた。
「……あんまり言いたくないんだろう?言いたくなかったら言わなくていいもんだ、何も無理して話そうとするもんじゃない。話したくなったら話せばいいもんさ」
立派に大人の対応をするものだと思う。素直にそこは凄いと感心してしまった。
「確かにあなたはあの日の夜、私の家の裏手に倒れていたさ。だけど、どうして商店街の裏道に倒れていたなんて私には分からないし、身体の傷痕についてもどうしたんだろうとは気になりはすれど、それがどうしても言えない事や辛くて言いづらいことなら無理に訊こうとは思わないね。大人になると誰しもが人には言えないような秘密の一つや二つ、少なからず出てくるもんさ、あなたから言おうとしない限りは私は別に構わないんだよ?時には流すことを覚えることも大事さ」
「……そうですか……、そう言えば私ってどんな風に倒れていたんですか……?」
「まあ、あのときはビックリしたね。夜中にいきなり凄い物音がしたからね」
そう言っておばちゃんはふふっ、と微笑し、ことの顛末を語り始めた。
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