Re:01
ハッ、と鋭く息を吐く音と共に意識が覚醒する。
意識の浮上に従って思考がはっきりするよりも前に、C.C.は半ば反射的に身体を起こした。
「ここは…」
思考が次第にはっきりしていく中、何が起こったのか、と思いながら周囲に目をやったC.C.はぽつりと呟く。
そこは先程まで自分がいた礼拝堂ではなかった。
廃工場か使われていない倉庫か。
人気の無さと所々から光が漏れる天井や壁の寂れ具合からC.C.はそう考える。
つん、と鼻を刺激する血と硝煙の臭いに視線を前にやれば、そこには血を流し倒れている―、死んでいる軍人らしき連中がいた。
自分を襲った、そして、恐らくここに運んできたであろう人物の姿はない。
「死んだと思って、捨てていったか?」
そう言いながらC.C.は自嘲気味に笑う。
腹部に手をやってみるが特に違和感はない。
むしろ、額の方がむずむずするので、そちらに手を持っていけば、ベッタリと手に血がついてきた。
「額でも割れたか…?」
手についた血を見ながら、C.C.は先程のことを思い出す。
自分を襲った相手によって行われた行為と、自分に齎された異変。
全身を引き裂くような痛みと、その中で確かに感じた感覚。
その感覚を思い出したC.C.は、信じられない気持ちになる。
ありえない、と思う。
だが、しかし。あの時起こったことを冷静に受け止めれば、やはりその結論に達する。
信じられないが、あの男は――。
「私のコードに、……干渉した?」
どうやったのかは分からない。
何が目的なのかも分からない。
だが、あの男は間違いなく自分の持つコードに触れた。
「一体、誰だったんだ? アイツは……」
全身を覆い隠していたが、額を覆った手の大きさから恐らく男だと推察できる。
だが、分かるのはそれくらいだ。
C.C.の知る限り、どんな形であれコードに干渉できる存在は『達成人』と呼ばれるまでに至ったギアスユーザーだけである。しかし、その『達成人』も、もういないはずだ。
C.C.の知る『達成人』は二人。だが、一方はしばらく前に継承したコードと共にCの世界に溶けて消え、もう一方は先程――。
そこまで考えてC.C.は思考を止める。まるで今考えていたことを振り払うように頭を振るい、思考を切り替える。
(色々気になるのは確かだが、考えたところで答えは出ない。とにかく、今はここを離れなければ)
コードに何らかの干渉ができる奴が、その不死性について知らないわけがない。何かイレギュラーからここに放置したのか、別の目的があるのかは分からないが逃げられる以上逃げないという選択肢はない。
少し前ならいざ知らず。今は、死ぬことも殺されることも全力で拒否する。何かに利用されることなんて論外だ。
「お前がせっかくくれた『明日』なんだ。無駄にするつもりはないさ」
頭に思い浮かべた人物に語りかけながら、C.C.は身体に異常はないかチェックし始めた。
外傷については問題ない。腹部の傷も、割れたであろう額も元通りで傷一つない。
すっ、と目を閉じ身体の内側に意識を向けてみる。こちらも問題ない。先程は身体が裂けんばかりに揺さぶられたコードも、今は腹立たしいくらいいつも通りに我が身に根付いているし、アイツとの繋がりもちゃんと―。
「――え?」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク