Re:03
あの日から。
色々なことがありながら、それでも、もう一度ルルーシュと歩むと決めたあの夜からしばらく。
ルルーシュがあの結末に至らないように、あの悲しい選択をしないようにしようと密かに決意したC.C.だったが――。
「よし、これでチーズ君にまた一歩近付いたぞ」
特別何かすることもなく、前と変わらない日常を送っていた。
ペタリ、と応募用紙に複数枚貼られたシールを愛しげに撫でながら、C.C.はゴロリとベッドにその身体を転がした。
しどけなく横たわるその姿は、彼女特有の雰囲気もあって色を感じさせなくもないが、姿だけは妙齢の女性のその周りにあるピザの空箱のせいで、むしろ残念な空気が漂っている。
しかし、その彼女の姿にいつもなら色々と小言を言うこの部屋の持ち主であるルルーシュは今はいない。
数日前、この地に着任したコーネリアの挑発に乗り、サイタマゲットーの方に向かったのだ。
過去の展開になぞらえるなら、このあとルルーシュはコーネリアに追い詰められ、ピンチとなるためそれを助けなくてはならない。
だが、逆に言えば今C.C.に出来ることはそれしかなかった。
一緒の部屋にいるとはいえ、今のルルーシュとC.C.の距離は遠い。いや、なまじ同じ空間にいる分C.C.に対するルルーシュの警戒心は強い。
お互いに弱味を握りあう共犯者同士ということで一緒にいることを許されているだけで、ルルーシュの言動の端々に拒絶の意が窺える。
以前は別段気にすることはなかったが、今は少々居心地が悪い。
そして、そんなルルーシュから信頼を勝ち取ることがC.C.の目下の課題だった。
「んー…」
もぞりと身体を動かして、頭に敷いていた枕を抱える。
ずっと抱いていたお気に入りの人形が今は手元にないため、その代わりだ。
あの人形よりもボリュームも肌触りも劣るが、何もないよりかは幾分気持ちが和らぐ。
ふぅ、と一つ息を吐いたC.C.の頭にはルルーシュのことが思い浮かんだ。
あの夜から、何度も思い、考えていること。
ルルーシュを死なせない方法。
らしくもなく頭を使い、色々な可能性を考えた。
だが、共犯者である男のように微々に精査できるほど面倒くさい頭脳を持ち合わせていないC.C.には、何度考えたところで、結局のところ、ルルーシュが明確に引き返せないラインを越えないようにするという解答しか出すことが出来なかった。
そのために、必ず回避しなくてはならない事象が二つ。
特区虐殺とラグナレクの接続。
前者は、ギアスの因果により多くの日本人と異母妹ユーフェミアがその命を散らした。
背負わされた希望と背負わせた罪。
親友との完全なる訣別。
この出来事は、ルルーシュを完全に後戻りが出来ない運命へ誘った。
後者は、単純に止めなければならない。
母マリアンヌの真の姿と、シャルル達のもはや妄執に成り果てた理想。
それ自体ルルーシュの心を苦しめるものではあるが、この計画は阻止しなければ、世界がどうなるか分からない。
そして、それを実行するために必要なのが……。
「ちっ」
巡りめぐって、最初に戻ってきた思考に思わず舌打ちが出た。
そう、この二つをどうにかするには、とにかくルルーシュに信用してもらわなくては話にならないのだ。
特区虐殺、―ひいてはギアスの暴走を回避するにはルルーシュがギアスを乱用しないようにするしかない。
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