ハーメルン
スーパーメタルクウラ伝【本編完結】
ザンギャ初体験

「なんて野郎だ! 一人で俺達のフルパワーに…!」

11人ものサイヤ人、地球人らの中の1人がそう言った。

「ヌゥゥ、く、くっ! ………………ッッ!!!」

その者達全員の気を、たった1人で受けきり、歯を食いしばって戦うクウラ。

「虫ケラめ……今、楽にしてやる………!!!」

秒単位で気を増大させていく悪魔のようなサイヤ人がそう言った時、
クウラの肉体は限界を超えてとうとう自壊を始めていたのだった。
その時、

「ク、クウラ様!」

遥か上空にまで圧されて来たクウラに声をかけてくる存在がいた。
クウラの部下の1人、紅一点のザンギャがクウラの後方…
成層圏を越えた先、熱圏からその壮絶なエネルギーの応酬を見守っていたのだ。

機甲戦隊がクウラの元を離れたのは、
クウラの必殺技・スーパーノヴァの使用を確認したためだ。
スーパーノヴァは元々惑星破壊級のパワーを秘めた技だったが、
現在のクウラが全力で使用した場合は太陽系破壊級……或いはそれ以上の威力である。
使用者・クウラの背後に回って待機をするのは、クウラ軍団としては常識レベルの動きだ。
クウラの背後で、しかも安全圏まで遠のいて
主の帰りを待って待機……となれば待機場所は宇宙空間。
それに、どのみちスーパーノヴァを使われた惑星は100%消滅するのだから、
部下達は宇宙船に乗って退避するのは当たり前である。
が、ザンギャはヘラー一族であり、
ヘラー人はクウラの種族と同じように(超能力によるバリアのお陰だが)
単身、真空での活動が可能なのだ。
そこでサウザーから「船外活動が出来ぬ我々に代わって最後まで見届けて欲しい」
と頼まれ、彼女は少し面倒だと思いながらも、
1人、地球の熱圏でクウラの戦いを見守っていた…というわけである。

ザンギャは当初、

(見届けるも何も……クウラ様の圧勝なんて分かりきってるじゃないか。
 無駄な仕事をさせるんじゃないよ)

と安楽に考えていた。
ザンギャがスーパーノヴァを見たのは7年の間に一度だけ…
喰う価値もないカス惑星を
クウラが「たまには使わないと威力調節のコツを忘れる」と言って破壊した時のことである。
驚嘆し、恐怖した。
その時のザンギャの感想は簡単に言えばそんなものであった。
一瞬で弩級のエネルギー弾を指先に作り出し、
ヒョイ…とボールを軽く放る程度の気軽さでその惑星は一欠片残さず消滅したのだ。
あの日の光景は忘れられるものではない。

そのスーパーノヴァを、凌ぎ、押し返してクウラをここまで必死にさせる程の敵の力。
それにも驚いたが、それ以上に感じたもの……それは、
このように命懸けの場面では少々不謹慎でもあったが…ある種の『ときめき』である。

無機質のメタルの皮膚に痛々しいヒビが入り、筋肉が裂け、外骨格が割れ、雄々しい角も折れ、
傷を負っても立ち所に癒やす筈のナノマシンは過剰な力の発露に機能不全に陥り、
自分と敵達のエネルギーが混じった超極大のエネルギー球の超熱に全身を焼かれ、
スパークと煙を立ち昇らせ血を吹き出しながら、歯を食いしばって独り戦う戦鬼の如き姿。

余りに痛々しい、とザンギャは思い、そして……

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