クウラとザンギャ
「…今、何とおっしゃいましたか…?」
サウザーが恐る恐る再確認する。
「俺はしばらく地球の孫悟空の所に拠点を移す」
主の発言に、かつてない衝撃がクウラ機甲戦隊を襲った。
ザンギャを除く全員が珍妙なポーズで固まり、
その顔は目玉が飛び出そうになって大口を開いていた。
ザンギャはザンギャで、切れ長の吊目を見開いて心底意外そうな顔で主を見る。
「その…私達はビッグゲテスター内で待機し、クウラ様の戦いを観戦していました。
ですが、途中から映像が酷く乱れてしまい最終的には映像は途絶え…
何が起きたのです?
私達が見ていない内に一体何が?
クウラ様が無事戻られて、
私達はてっきりクウラ様が破壊神やサイヤ人どもに勝利したと思ったのですが…」
機甲戦隊内で唯一、正気を保ち固まっていない紅一点…ザンギャが戸惑いながら尋ねたが、
通常形態のクウラの何時も通りの無表情の中に僅かだが不愉快が滲んでいた。
それをザンギャは見て取った。
今、クウラとザンギャを始めとする機甲戦隊はビッグゲテスターのナノマシンで繋がっている。
機甲戦隊各員の体内に注入されたナノマシンは彼らに凄まじいまでのパワーアップを齎し、
常時心身を正常に保とうとするリカバリー機能がある。
その他にもクウラと常にテレパシーのように脳波で会話が可能となっていた。
それは異空通信である為何者の妨害も受けず距離にも影響されないが、
なのにザンギャ達は先の戦いでクウラの様子を見ることが出来なかった。
それが意味するのは主導権を握るクウラ側に異空通信も出来ぬほどの事態が起きた…
或いはクウラが通信を拒否した場合だ。
今回はどちらだろう、とザンギャは考える。
場合によってはクウラから叱責を受けるかもしれない。
しかしそれでもザンギャは聞かずにはいられない。
敬愛する主に起きた事を理解しないでいるのはザンギャには耐えられないことだった。
クウラはビッグゲテスターの指令席にゆったりと腰掛けると、やがて口を開いた。
「…俺は奴らに負けた」
クウラは目を瞑り、その言葉を自分に言い聞かせるように…噛み締めるように紡いだ。
ザンギャは(やはり)と思った。
そしてクウラの次の言葉をじっと待つ。
「驚かないのだな」
「驚いています」
クウラは真っ直ぐに自分を見てくる遥か格下の戦闘力しか持たない女を見返す。
「…」
(コイツは、そういえばいつも俺の目を動じずに良くも見るものだ。
俺の足元にも及ばぬ雑魚に過ぎぬくせにな…。胆力、とでもいうのか?
いや、違うな…ザンギャは…何故こうも俺の目を見返せるのだ。
フリーザも、父でさえ俺の目を直視するのを恐れる時があったものだが)
妙な女だと思いながらもクウラはザンギャに問う。
「失望したか?貴様の主は破壊神に…サイヤの猿にすら劣る男だった」
「ありえません。クウラ様が誰に敗れようと、私は貴方に付いていきます」
きっぱりとザンギャは言い切った。
いっそ小気味いい程の言い切りようだった。
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