5話
アルヌスの丘から数キロ離れた場所からアルヌスの丘を眺める一人の男がいた。その男は鋭い眼光を丘にいる自衛隊そして海兵隊達、特地遠征団に向けているとその傍に兵士が近寄ってくる。
「殿下! 2つ向こうの丘に斥候らしき兵士を確認いたしました。いかがいたしますか?」
「放っておけ。他の諸王達との会合を急がねばならん」
そう言いデュランは馬を走らせ諸王国が建てたテント群へと向かった。集まった諸王国は全部で8ヵ国。兵力はざっと30万程が集まった。
その夜、各国の諸王達が会議用のテントへと集まり、招集要請を出した帝国の現場指揮を任されている司令官を待っていたが。
「帝国軍の司令官が来れんだと!」
テントで帝国軍の司令官が来るのを待っていたデュランは用件を伝えに来た兵士に立ち上がってそう声を荒げた。
「我が帝国は今まさにアルヌスの丘にいる敵と正面で対峙しており、現場を任されている司令官がその場を離れるわけにはいかない為、この場に来れないのです」
兵士にそう言われ、デュランは気に食わんと言った表情で座る。
「解せんな。丘にいた敵はさほど多くはいなかった。脅威になりそうな巨人は何体か居ったがされど脅威にはならないはずだが」
そう言っているとその傍に国同士、そして同じ国を背負う者同士で仲が良いリィグゥが話しかけてきた。
「デュラン殿、帝国は我らの代わりに敵を抑えてくれているんだ」
「リィグゥ殿」
デュランはリィグゥの推論にはどうしても賛同が出来なかった。すると兵士がその言葉を待っていたと言わんばかりに、諸王達に作戦を言い渡す。
「諸王国の皆様には明日、夜明けとともに丘にいる敵に攻撃していただきたい」
「了解した。先鋒は我が軍が承りましょう」
「いや、我が軍こそが先鋒に!」
「お待ちくだされ! 此度の戦は我が軍に!」
そしてテント内は諸王達が次々に自軍が先鋒に立ち手柄を立てようと躍起になり始めた。デュランは帝国の策的な何かに乗せられた様な気分になり不安が募り始めた。
「―――それでは、明朝アルヌスの丘にて」
そう言い帝国兵はテントから出て待機させていた馬にまたがり、諸王国軍のテント群から足早に立ち去った。
「朝が楽しみだ!」
「我が軍だけで敵を蹴散らしてやる」
先鋒に立つことが出来た諸王達は朝が楽しみだと談笑している中、デュランと先鋒を取り損なったリィグゥがテントの隅にいた。
「無念、先鋒はならなんだったか」
そう言いながらリィグゥは落ち込む。するとデュランが自身の推論を呟きだした。
「異界の敵は1万も満たない人数と巨人が16体程。それに比べ我らは号して30万。武功が欲しくば先鋒以外は有得んとお考えか?」
「そうと分かっていて何故先鋒を望まんのだ?」
リィグゥはデュランが分かって先鋒を取らなかったのか気になり聞く。
「此度の戦はどうも気に入らん」
デュランがそう言うと、リィグゥは笑いだす。
「ハハハッ、エルベ藩王国の獅子と言われたデュラン殿も寄る年波には勝てないという訳ですか」
リィグゥ笑い声は夜の闇に飲み込まれていった。
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