010:Woman with the Rifle. Man with the Turret.
「はぁ……っ……はぁっ!」
完全な闇に覆われたとある建物の中を、一人の女が走っている。
その背中に負われているのは、使いこまれてボロボロにくたびれているライフルだ。
女は息を切らしながら階段を駆け上がり、屋上へと続くドアを蹴破る。
このあたりに、小型クリーチャーはほとんどいない事を、女は良く知っていた。故に、音を立てる事に躊躇いは無い。
いや、今はそれより――
「くそっ! なんだあの化け物は!」
いつもどおり、稼いで頂いてきた弾薬や資材で本拠地周りを補強していた時に、それは現れた。
どこに隠れていたのか知らないが、ここらの低い建築物程度の大きさは持っていた巨大なケーシー。
少し前まで、女はその巨大ケーシーと交戦していた。とりあえず、とどめを刺すつもりは無かった。
まずは負傷させて逃がし、その隠れていた住処を暴くのが彼女の目的だった。
なにせ、大きさはケタ違いとはいえ見た目はケーシー。群れる事で知られているクリーチャーだ。
確かにこの辺りはケーシーの群れがいくつもあり、彼女がそれを駆逐していた。
拠点のすぐそばがクリーチャーだらけだなんて、この時代では当たり前だが、その状況を好んで受け入れる馬鹿はいない。
だから少々やっかいでも、周辺の掃除になるのならばと女は戦っていた。
そしてその戦いはすぐに終わった。
ちょうど自分の拠点の方から猛烈な勢いで襲いかかって来た、更に巨大な脅威によって。
「くそっ! せめて私一人ならともかく……っ!」
元々ここは土地の平らな立地だ。旧時代の住居や店舗の廃墟によって視界は遮られているが、ちょっと高い場所に登れば大体見渡せる。――本来ならその前に、『昼間なら』という言葉がつくのだが、今回にいたってはその必要がなかった。
これまで見た事のない小さなキャンプファイヤーの光、そして響く銃声と轟音によって彩られたステージが眼前に広がっている。
そして――燃え盛る奴と、奴を相手に戦っている人間達の姿も。
「なぜ、ここに人が来ているんだ!!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「キョウスケ! さすがにもう限界だぞ!」
バリーに言われなくても分かっている。
まだ稼働しているタレットはわずか数機。たった今、さらに一台が静かになった。
痛む右目を押さえながら立ちあがって周囲を確認するが、生きているのか死んでいるのか分からない倒れた仲間が多くいる。
(くそが! いい加減一度くらい逃げ出してくれてもいいだろうが!!)
せめて今夜を乗り切れれば、明日からは電力をある程度自由に使えるようになる。
弾薬の問題はあるが、防衛線を縮小して弾薬を一度纏めればなんとかなるだろう。――今夜さえ乗り切れれば。
「ジェド! 投げ物はあるか?!」
「そこに落ちてる投げ斧数本、手持ちの火炎瓶二本、手榴弾一個、あとはパイプ削った投げ槍の山だ!!」
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