12 中学生一年 宮永家姉妹喧嘩爆裂乱闘編
1、
「よぉモモ! 良く来てくれ……た……」
待ち合わせの場所に現れたモモを見た京太郎は、絶句した。
何というか、美人過ぎるのである。
モモと知り合ったのは中学に入る前。つまりまだ知り合って二ヶ月しか経っていない。それよりも前はお互いにランドセルを背負っていた。つまりは小学生だった訳だが、今のモモを見て二ヶ月前まで小学生だったと思う人間はいないだろう。
一目で余所行きと解る服は、男の京太郎の目から見ても気合が入っており、今日のイベントにかける意気込みを嫌というほど感じさせた。髪型こそいつものままだが、薄く化粧までしている始末である。
身長は京太郎から見て頭半分ほど低いが、出るところは出ているモモである。同級生だと知っている京太郎ですら、もしかしたら二つか三つは年上なのでは、と錯覚するほどモモは大人びていた。
「待ったっすか?」
「いや、待ってない。俺も今来たところだけど……どうした?」
「似合わないっすか?」
くるり、とその場で一回転して見せるモモ。ふわりと舞うスカートと女の子な匂いにくらりとするが、男のプライドとしてそれを顔には出さないようにしながら――それでも頬が熱くなるのは止められなかったが――モモを褒める言葉を探した京太郎は、気の利いた言葉の浮かばない自分に辟易としながら、
「似合ってるよ」
思っていることそのままを口にした。
それを聞いたモモは、花が咲いたように微笑んだ。
ぼーっと、その笑顔に見とれてしまった京太郎は、頭を振った。見とれている場合ではない。今日の目的は麻雀だ。そのことはモモにも伝えてある。それなのにどうしてここまでめかし込んで来たのかさっぱりだが、とにかくやるぞという意気込みだけは理解できた。
突然誘った麻雀であるが、やる気でいてくれるならばこれ以上はない。ステルスというレアな特性まで含めて、モモの麻雀の実力は京太郎も認めるところである。やる気ならば、今日はこれ以上ないほどの戦力になってくれることだろう。
「友達の家は近いんすか?」
道を行きながら、モモが問うてくる。
「そんなに遠くないはずだけど、行くのは初めてなんだ。近くで待ち合わせをして、一緒に行くことになってる」
「京さんの友達なら、きっと麻雀大好きっすね」
「どうだろうな、あまり好きじゃないみたいなことは言ってたが。いたいた。宮永!」
待ち合わせ場所では、咲がしょんぼりと佇んでいた。気落ちしているのが離れていても解る。そもそも今日の麻雀は咲が主導で始めたことではなく、いわば京太郎のおせっかいだ。咲の姿を見て今更余計なことをしただろうかと考えるが、ここで止めますとは言ったらケーキに目の眩んだ照にぼこぼこにされる。
ここまで来たら、もう後には引けない。嫌な気持ちを吹き飛ばすように京太郎が名前を呼ぶと、顔を向けた咲はその場で首を傾げた。京太郎ではなく、京太郎の隣の空間を、目を細めて凝視している。見えてはいないが、何かいるとは感じているのだろう。流石に照の妹だけあって、感性が鋭い。
少なくともモモの周囲にはあまりない反応だ。自分が見えるかもしれない相手。これは喜んでいるだろうと隣に立つモモを見れば、モモは自分がいる方を凝視している咲を見て、憮然としていた。
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