ハーメルン
ロリてんっ! ~ロリコン勇者が転移して、幼女ハーレム作ります~
第十五話「何言ってんだコイツ」

「くっくっくっくっく……」

 少女の高笑いが、街道に響く。

「あっはっはっはっは……」

 どうしたものか。いや、本当にこれはどうしたものか。

 エマは、困惑しきった目でその少女を眺めている。

 男は、警戒心を剥き出しにその少女を睨み付けている。

 そして女は簀巻きのエマにナイフの刃を押し当てながら、胡散臭そうにその少女を見つめていた。


「お前ら、もう謝っても遅いぞ……」


 ザッ、と音を立て、少女は自らの髪を凪ぐ。バサリ、と世界が嫉妬するほど潤いのある黒髪が、視線を浴びて揺らいでいる。

「そこの通り魔二人組に告ぐ!! お前達はもう私に呪われている!! 命が惜しければ、今すぐ土下座すると良いわ!!」
「……さっき『謝っても遅い』て言わなかったか?」
「そんなの言葉のあやさ、ペニー様ぁ!!」

 死を覚悟した俺を救うべく、凶悪な男と俺の間に割って入った少女(オンディーヌ)は、どや顔で高笑いを決めていた。







 場になんとも言えない、しらけた空気が流れ出している。

 オンディーヌは命を賭けて、無様な俺を助けに入ってくれたのだろう。その行動には、いくら感謝してもしたりない。

 ……なの、だけれども。

「えっと貴女、何者? 貴女に呪われるとどうなるの?」
「よくぞ聞いてくれた! 私は貴重な呪術師の生き残りにして、ペニー様の忠実な奴隷!!」
「奴隷なんだ……」
「ペニー様とエマ様死んだら自由だから、ちょっと迷ったけど……。どう見ても貴様らが悪いし、良識にしたがってペニー様に味方するよ! 上手く活躍したら奴隷から解放してねエマ様!」
「……否定出来ない、どう考えても悪者はボク達だよね。ううう、どうしてこんな事に……」

 そう張り切りまくっている彼女に、正直に言ったら怒るだろうか。

 オンディーヌには、素直に逃げてもらった方がよかった。彼女が助けになるとは思えない。

 気持ちは嬉しい。彼女に過酷な労働を強いている側だというのに、命がけで俺達に味方してくれるなんて思っても見なかった。

 だが、相手が悪い。

 男は尋常でない強さを誇る勇者だし、女は幼女に刃を向けるサイコパスだ。どちらも口八丁で止まる相手じゃない。そもそも本当に呪術師だと、信じてもらえるかも怪しい。

 俺は不安げにオンディーヌ見守った。俺を庇って仁王立ち、不適な笑みを崩さない我らが奴隷少女を。

「私に呪われてしまったお前らは……。くくく、お前らは一生辛い十字架を背負っていけねばならんのだ……」
「じゅ、十字架?」
「絶望しろ! お前らは一生、眠りにつくことが出来なくなった! 特に女子のお前、お前のお肌は死ぬまでカサカサだ!!」
「何!? その絶妙に嫌すぎる呪い!!」

 がびーん、とショックを受けた悪魔女。

 確かに絶妙に嫌だよな、それ。不眠症は思った以上に辛い。だが、それがどうしたと言われたらそれまでである。

 さて、ここまでの展開は予想通りだ。果たして、こんな脅しであの男は止まるだろうか。

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