ハーメルン
rikkaのメモ帳(短編・走り書き集)
タツミーをヒロインにしてみるテスト④

「さて……そろそろ僕も帰るよ。龍宮君は、また明日。朝倉君もまた機会があったらゆっくり喋ろうね?」

「できれば喋るだけでなく、取材もお願いしたいですけど? 芹沢先輩」

「ハハ、僕には余り話題がないからね。部活に関しての取材だったらいつでもどうぞ」
 
 麻帆良のパパラッチこと朝倉に捕まってしまい、芹沢と龍宮は取材に半ば強制的に協力させられ、様々な質問に答え、そのままの流れで女子寮前でダベっていた。
 しかし、さすがにいつまでも喋っているわけにはいかず、今度こそ本当に解散することになった。
 
 芹沢はいささか名残惜しそうだった。
 ここ最近は、龍宮が葵といることが多く中々話す機会がなかったためか、龍宮とそれなりに長く話せたのがよっぽど嬉しかったようだ。

「えぇ、それでは芹沢部長もお気を付けて」

「ありがとう、龍宮君。それじゃあ、おやすみ」

 そういって芹沢は振り返り、男子寮への帰路につこうとしたのだったが――その道の先からは、見覚えのある人物が、歩いてこっちに向かっていた。

 ボロボロになった制服を纏って、更には体中に擦り傷を作っている。
 そしてその両手には、少し顔色の悪い女生徒を抱きかかえていた。


「ありゃ、芹沢部長に龍宮……ついでにパパラッチ朝倉か。また取材とか言って捕まえてたのか?」


 ボロボロの見た目に反してその男――篠崎 葵は、気軽に三人に声をかけた。


「篠崎君!? その怪我は……いや、その女の子は一体!!?」

 芹沢が驚いて声を上げると建物の中に消えかかっていた龍宮と朝倉もこっちに気づき、そして驚きの声を上げる。

「葵先輩? 一体、何が……っ!?」

「ちょっと篠崎先輩……その子、大丈夫なの!? 襲ったんじゃないでしょうね!!?」

「あー、うん。多分大丈夫と思う。そこの所で倒れてたんだけど、特に何かされた訳でもないみたいだし。念のために保健の先生を呼んでくれ。それと管理人も、この人がどこの部屋なのかは知らないしね。あとパパラッチ朝倉、お前は後で鼻フックの刑に処す」

 まるで大したことのないように葵は軽く笑って見せると同時に、抱えている女生徒のために簡単に指示を出す。真っ先に反応したのは芹沢だった。

「わかった。僕が保健の先生を呼んでくるよ!」

 そういうと、芹沢はすぐに保健医を呼びに飛び出していった。
 一方で朝倉も、急いで女子寮に入って管理人室へと向かう。
 残されたのは、女生徒を抱きかかえている葵と、その葵をジッと見つめる龍宮だった。

「葵先輩、何があったんだい?」

 そう尋ねてくる龍宮の声はいつもの視座かな笑いを含んだ物ではなく、どこか冷たい物を感じさせた。


――そして、少し震えていたように聞こえたのは、葵の気のせいだろうか。


「んにゃ、俺もよくわからん。俺の荷物の中に、お前のリボンが入っていてな。届けようと思ってこっちに向かってたら、たまたま倒れていたのを見つけてな」

「その擦り傷は? それに制服も派手にやられているようだが?」

 虚偽は一切許さないと訴えているような龍宮の鋭い視線に、葵はいつもと変わらない様子で答える。


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