タツミーをヒロインにしてみるテスト⑨
互いに宣戦布告を突きつけ合ったエヴァと葵は、その後しばし談笑し、夕食を終えてから別れた。
葵が帰った後、エヴァは、従者の茶々丸に後片付けを指示し、自分は再びテーブルに着く。そして、しばらくしてから、玄関先に向かって、
「そろそろ入ってきたらどうだ? さっきから隠れていたのは分かっているぞ?」
と、嘲笑うように声をかける。それと同時に、ドアがギィィっと開いて、女性が入ってきた。
「来ると思っていたぞ、龍宮真名。もっとも、まさかこそこそと会話を隠れ聞いているとは思わなかったがな」
入ってきた女性――龍宮真名は、エヴァを鋭い目で睨みながら、彼女に銃を向ける。その目は、隠しようのない怒りで染まっていた。
『Phase.8 慟哭』
「どういう冗談だ、エヴァンジェリン? 彼は、確かに異常な所は見られるがそれでも一般人だ」
エヴァに拳銃を突きつけたまま、彼女は静かに、しかし怒りを含んだ声で彼女に告げる。
「ほう。それはつまり、無理矢理あの男を捕らえて記憶を奪って何事もなかったことにしろという事か?」
「…………」
「おや、これは驚いた。あの男に一番近いお前が、咄嗟に答えられないとはな。いや、近いからか?」
エヴァは、嘲笑に近い笑顔で、龍宮と相対する。
「それが、あの男にとって、決して触れてはならない事だと分かっていてもか? 葵が、記憶というものがどのような形であれ、失う訳にはいかないものだと考えていると、お前が一番理解しているはずだ」
「だったら……!」
龍宮の目には、確かな怒りが浮かんでいる。葵や、彼女の友人がこの場にいたなら、信じられないと思うほどに激昂していた。
「なぜ、戦う様に仕向けた!? そんな事をしなくても――」
「その質問に答える前に、逆に問おう」
龍宮の言葉を遮るように、エヴァは冷静な口調で尋ねる。
「なぜ、お前はこの事を学園側に話さなかった? なぜ、わざわざここに乗り込んできた?」
「……っ」
咄嗟にその問いに答えられず、龍宮は思わず歯を食いしばる。
「くっくっく。お前もどうやら、学園の全部が全部信用出来るとは考えていないようだな?」
エヴァは、先ほどまで葵に見せていた、彼の制服の切れ端を龍宮に投げてよこす。魔法側に携わる傭兵として、様々な知識を要している龍宮は、すぐにそれが何か理解し、怪訝な顔でエヴァを見返す。
「……追跡魔法陣? しかし、どうして?」
困惑する龍宮に、エヴァは笑みを深めながら、どこからか取りだした3,4枚の書類――茶々丸に調べさせた、篠崎葵の調査書を龍宮に渡す。龍宮は、それをひったくるかのように取り、目を走らせ――
―― 今にも書類を破り捨てそうになるほどに怒気を発し、憤怒の形相で、何度も書類を読み返しだした。
その様子に、エヴァは軽くため息をつく。そして、茶々丸に、もう一度飲み物を用意させて、龍宮を席に着かせる。
「別に葵が何かしたわけではない。むしろ、あいつは完全な被害者だ。だからこそ、馬鹿共はあいつを警戒する。何かあるのではないかと、気付いているのではないかと、冷や冷やしながら、遠目に見ている」
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