ハーメルン
rikkaのメモ帳(短編・走り書き集)
タツミーをヒロインにしてみるテスト⑩

 葵から届いた『明日会いたいというメール』に、『明日の昼食時に、食事を取りながら話す』という内容で送り返しながら、龍宮は、葵からの相談内容について考えていた。

(大方、『闇の福音』と戦う力を身につけるための訓練についてだろうが……)

 ふと、いつもなら同室にいるはずのルームメイトの事を思って、龍宮は軽くため息をつく。

「確かに、『その』可能性がないとは言い切れないが……」

 エヴァとの話し合いが終わった後、龍宮は学園長室へと向かい、遠まわしに篠崎葵についての情報を聞いてみた所、あっさりするほど簡単に答えてくれた。過剰警戒している教師たちはともかくとして、学園長たちまでが、一応監視を付けていた理由。
それは、疑問に思う所はあれど、『彼が巻き込まれた場所』を考えれば、確かにないとも言えなかった。

「あの人が、関西に操られているかもしれない……か……」

 ある意味で麻帆良――関東魔法協会と険悪な関係となっている組織、関西呪術協会。ルームメイトである桜咲刹那という少女は、その関西呪術協会の長の一人娘―近衛木乃香の護衛として、この麻帆良に来ていた。もっとも龍宮から見て、おそらく護衛というのが建前で、それを命じた人間―― 恐らくは長だろうが。実際は近衛木乃香の友人として傍にいてほしかっただけだろうと推測していた。
 だが、刹那本人は、その任務をそのまま真剣に受け止めて、近衛木乃香の安全のために、龍宮と一緒に、麻帆良の警護を行うこともしばしばあった。

「学園長や高畑先生達、学園長派の人間も近衛木乃香には注意を払っている上に、葵先輩への検査も念入りにやって太鼓判は押してあるのだから、そこまで神経質になる必要はないだろうに」

 大方、学園長と対立している一派にそそのかされたのであろうルームメイトを、どうやって説得しようか考えながら、龍宮は、もう一つの難題―― 葵の強化特訓計画について、考えを深めていく。

「まったく、エヴァンジェリンも厄介事を押しつけてくれる。まぁ、依頼というなら引き受けるがね」

 部活や追いかけっこの時の葵の動き、癖を思い出しながら、頭の中で龍宮は、どういった形を目指すのが、葵に最もぴったり当てはまるのかを考え、

「ふむ……。彼女達に協力を頼んでみるか」

 そう呟くと、龍宮は、自分の机の上に置いてある写真立てに手を伸ばす。そこに収められているのは、芹沢、佐々木のコンビに加えて、自分と葵の4人で秋だというのに海に行ったときに、タイマーを使って、皆で撮った写真だった。机の前のコルクボードには、その他にも、合宿の時や、普段の部活で皆と撮った写真がピンで止められている。
 どの写真にも、大体は芹沢部長が笑っていて、佐々木副部長が葵を弄っていて、葵がそれ対して反論、あるいは反撃を試みている。そして、その中に、龍宮は違和感なく交じっていて、楽しそうに笑っている。

「これからどう動くかは分からないが……」

 写真立ての中で、佐々木に引っ張られて真ん中に―― 自分と芹沢の横に寄せられている葵を見て、龍宮は少し苦笑を浮かべる。


「出来る事ならば……いつか、また皆と一緒に……」






『Phase.9 出席番号12番及び20番』






「で、龍宮。俺に会わせたい人間がいるって話だけど?」

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