激震
「何!?第三偵察隊の伊丹中尉が拐われただと?」
アルヌス飛行場に戻った健軍大佐が部下からそう聞いた。
「どう言う事だ?」
健軍大佐は調印した協約を向こうから破った事に不審に思った。
「いえ、その・・・第三偵察隊と第一偵察隊の報告によれば、主犯格はピニャ殿下直属の近衛騎士団のようです。その騎士団はイタリカに向かっていたらしいのですが・・」
「調印しているのを知らなくて当然かぁ」
健軍大佐は無駄に血を流さずに済みそうで内心安堵する。
「ですがもし伊丹中尉が戦死してたら・・」
「恐らくイタリカに侵攻せざるを得ないだろうな」
一方その頃イタリカのフォルマル伯爵の館では薔薇騎士団の団長ボーゼス・コ・パレスティーと第二部隊長のパナシュ・フレ・カルギーがピニャに敵指揮官を捕らえたと報告を行なっていた。
「なんてことをしてくれたのだ!!」
とピニャはそう怒鳴りワインが注がれていた杯をボーゼスに投げつけた。杯がボーゼスの額に当たり額に傷が出来血が流れる。
「・・え?」
ボーゼスは突然の事に理解が出来なかったようでその場に座り込む。
「ひっ姫様!!我々が何をしたと言うのですか!?敵の指揮官を捕虜にしたのですよ!」
とパナシュはボーゼスの顔に着いたワインと血を拭きながら尋ねる。ピニャは頭を抱え壁の方をチラッと見る。其処にはボロボロの伊丹の姿があり完全に気を失っている。
「結んだその日に協定破り しかもよりによって・・・」
「イタミ殿!!イタミ殿!!」
ハミルトンが必死で呼びかけるも返事がない。そもそもこの世界では敵である捕虜の人権など保障されないのだ。
「メイド長 頼む」
「かしこまりました」
ピニャはメイド長に伊丹を看病を頼む。
「貴様らぁ〜イタミ殿に何をした?」
ピニャは仁王立ちしていた。
「い、いつもと同じごく当たり前に・・・」
「いたぶりながら連行してきたわけか・・・」
「なんて事を なんて事を・・・いいか貴様ら、連中は盗賊ですら丁重に扱えと言い出すのだ。しかも協定で妾が往来の自由を認めていたのだぞ!」
「そ そんな・・・」
「協定なんて私たちが知るわけがー」
「(帝国の常套手段ー協定破りを口実にニホン軍が戦端を開けば滅ぶのは・・・)彼の部下はどうした?」
「逃げおおせました。指揮官を置いて・・・もしや協定を守るために?」
「そうだ!貴様らどうせ臆病者と嗤っていたのだろう!」
「あー、姫様?」
「なんだ、グレイ」
「此度は幸い死人は出ておりませぬ。小官が思いますに策など弄されるより素直に謝罪なされましたら?」
「謝罪?妾が敵に頭を下げろと?弱みを見せろと言うのか!?」
「では戦いますか?ニホン軍と死神ロゥリィ・マーキュリー相手に」
グレイにそう言われて食い下がるピニャ。
「小官はごめん被りますな ま どうなるかはイタミ殿の御機嫌次第なんでしょうが・・・」
グレイは、日本軍とロゥリィと戦うなんてまっぱらごめんと言う。グレイがそう言うと、ピニャ達はポカンとしてしまう。
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