記者会見
暗く長いトンネルの中を進み続けやっと光が見えて来た。そして彼女達の目に飛び込んで来た光景は、摩天楼だった。ピニャとボーゼスはトンネルの先の世界に唖然とした。先まで居たアルヌスの丘は大自然が多くなる丘から門をくぐった先の摩天楼に驚嘆した。
『帝歴六八七年霧月五日、敵国ニホンの帝都トーキョーリサ殿宅で記す。世界を境たる『門』をくぐるとそこは、摩天楼だった。かつてこの地を踏み締めた将兵は何を思ったのだろうか?妾は今、この巨大な建物の谷間にあって自らの矮小さを味わっている。これほどの建造物群を造り上がった国家と戦争をしている帝国の将来を憂えている』
と後にピニャが自らの手記にそう書き記した。巨大な建物と言えば帝都の皇城や元老院議事堂、あとは軍事用の城塞しか知らないピニャたちにとって、銀座の街並みでも十分であった。 銀座は世界有数の大都市だ、中世レベルの人間にとって銀座の街並みは十分過ぎるほどの摩天楼だった。ピニャやボーゼスだけでは無く、レレイやテュカやロゥリィも目を丸くして呆然としている。
「中世からいきなり二十世紀に来たのと同じだからなー、ま、大人しくなっていーか」
今の銀座の門には軍が駐留して常に見張っていた。既にこっちの世界は真冬の真っ只中だった。ピニャらが立ち尽くしている一方で伊丹は、検問所で外へ出る手続を行う。 そして書類記入をしようとしていた時、
「伊丹中尉?情報本部から参りました駒門です。皆さんの案内役を仰せつかりました」
と自己紹介する黒服の謎の男。その男を見て伊丹と大場は気づいた。
「おたく・・・・特高(特別高等警察)だろ?」
「やはり、バレましたか」
「アンタの周りから漂っている雰囲気が他の人間と何か違ってるんだよな。生憎、帝国軍人が全員が馬鹿みたいになれる職場なら情報漏れなんかしないでしょ」
「クックックッ流石ですね。こちらでもアンタ達の事を調べさせてもらいました。伊丹耀司、尋常小学校を卒業、高等小学校卒業後16歳で陸軍士官学校を平凡な成績で入学し、卒業後は士官候補から陸軍少尉に任官。勤務成績は不可にならない程に可。業を煮やした上官によって第1装甲擲弾兵師団に放り込まれ、その後中国の南京に赴任する。」
「よくもまぁそこまで調べたものだ」
「その後は太平洋戦域に移動し万年少尉の筈が・・銀座事件では功績が認められて二つの勲章を授与され陸軍中尉に昇格。同期からは『帝国軍人の恥さらし』『怠け者』『面汚し』・・よろしくない評価だねぇ・・クックックッ」
「大場栄、愛知県実業教員養成所を卒業し、20で陸軍第18歩兵連隊に配属になる。その後、予備陸軍歩兵少尉に任官。その後歩兵第18連隊の中隊長に任命され、太平洋戦域のサイパンで陸軍大尉に昇格する。」
「よくもまぁそこまで調べたな」
まぁ真実だから何も言わない。その後駒門は他の特高と何処かに行った。
伊丹達は用意されたバスにのり伊丹達は帝国議会に向かう。途中に大衆食堂で昼食をとりテュカらに参考人として相応しい服装にするために百貨店に行き背広のスーツを購入した。
伊丹達一行は帝国議会の敷地内に入っていく。
『ここがニホンの元老院・・・』
「じゃ、富田あとよろしくー」
「わかりました」
と伊丹大場は、ロゥリィ、テュカ、レレイを連れてバスを降りて帝国議会へと向かう。
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