ハーメルン
GO GO! れめでぃおす
GO GO! れめでぃおす3



「ケラルト! たいへんだ! 昨夜遅くに聖王の館に行ったらカルカ様が……」

「姉様、何があったの?」

 と、不意にレメディオスは黙りこんでしまった。

「……あれ? 私は何を話そうとしたのだろう?」





 ケラルトが帰ってくるとレメディオスがソファに寝そべっていた。その顔を見てケラルトはギョッとする。

「……姉様! いったい何を顔に貼っているの?」

 レメディオスは寝そべったまま答える。

「実はカルカ様に教えてもらったのだ。顔にキュウリを輪切りにしたものを貼る、パックというのだ」

「……しかし姉様。それはキュウリではありませんよ?」

 レメディオスはドヤ顔で答えた。

「そうだ。私はキュウリよりハムが好きだからな」





「ケラルト。カスポンド王兄殿下はなかなか話がわかる方だな」

「何があったの姉様?」

「この前殿下と聖騎士団の幹部で会食したんだ。殿下は少しも食べないから『もったいないな』と思っていたんだ」

 レメディオスは目をキラキラさせた。

「そしたら殿下が『よろしければカストディオ団長に差し上げましょう』って私にくれたんだ」

 ケラルトにはレメディオスがよだれを垂らさんと見詰める様子が目に浮かんできた。

「しみじみと私は団長になって良かったと思ったぞ」





「ケラルト、南の貴族はどうしてカルカ様に批判的なのだ?」

「姉様、それはカルカ様が女性だからですよ。聖王の位は代々男が継承してきたから古い貴族には面白くないのでしょう」

 レメディオスは腕を組んで考え込む。と、明るい顔で手を叩いた。

「そうだ! 良い事を思いついた! ケラルトの魔法でカルカ様にチンチ──」

「──生えません!」





 その日は一日妙に静かだった。ふと、ケラルトは今日一日レメディオスが一言もしゃべらない事に気がついた。

「姉様、どうしてしゃべらないの?」

 レメディオスはキョロキョロと周りを見てから答えた。

「実は民が『カストディオ姉妹はしゃべらなければ美人なのにな』と噂をしていたのを聞いたのだ」

 ケラルトは『姉妹』という言葉に引っ掛かりを覚える。

「姉様、姉様はしゃべるとお馬鹿な事がバレるから納得です。でも私には当てはまらないと思うけど?」

「いや、イサンドロやグスターボや皆が言ってるぞ? 『ケラルト様は黙っていれば腹黒さを感じず美人だ』だとな」

 その晩イサンドロとグスターボは謎の腹痛に苦しんだという。





「決めた! 私はカルカ様のような素晴らしい女性になるぞ!」

 カルカ聖王女即位一周年記念式典でのカルカ様の演説に感動したレメディオスは宣言した。

「……で、ケラルト。私はどうしたら良いかな?」

 ケラルトはため息をつく。

「わかりました。では姉様、私の言うことを聞くのですよ?」

「うん。わかった」

「──違います。『はい。わかりました』です。それに私の事は今日から『ケラルト先生』と呼びなさい」

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