第18話 ファーストコンタクト
パチパチ、パチパチと焚き木が弾ける音がする……。
「それでは、そうだな……、全員からコメントを貰いたいところだが、時間もない……、各班の班長、それぞれなにか一言ずつコメントをくれ、これからの豊富でも、目標でも、なんでもいい前向きなのを頼む、まずは参謀班の人見からだ」
と、何やら学級会みたいなのがはじまる。
「前向きなものか……」
参謀班の班長、人見彰吾が銀縁メガネを人差し指で直しながら、焚き火の前、東園寺の隣に歩いていく。
「知っての通り、俺たちには魔法がある……」
と、彼が話し始める。
「魔法には攻撃魔法、防御魔法、補助魔法、回復魔法があるのは周知の事実だが、俺たち参謀班の見解では、まだまだこれだけではない、他にも隠された魔法があるはずだという意見で一致している。で、どんな魔法があるかだが、さっき述べた四種の魔法以外で考えられるのは一つしかない、つまり移動魔法だ、俺たち参謀班はここを突破口として元の世界に戻る方法を模索している」
「おお……」
「なんか、本格的……」
「希望が持てるよね……」
と、みんなが感心して言う。
「必ず家に帰してやる、と、言いたいところだが、まだ不確定要素が多すぎる。今は期待して待っていてくれ、と云う表現に止めておく、俺からは以上だ……」
なるほどねぇ、移動魔法ねぇ、あればいいねぇ、そういうの……、と、期待に胸を膨らませながら、たっぷりのハーブと一緒にお肉を頬張る。
「ありがとう、人見、期待している。それでは、次は生活班、福井、頼む」
「あ、はい……」
と、生活班の班長、福井麻美が返事をして席を立つ。
「ハル……、気付いたか……?」
福井が焚き火の側に歩いていくのを目で追っていると、秋葉が和泉に小声でそう話すのが聞えてきた。
「ああ……、風が変わった……、鳥の鳴き声も消えた……」
和泉の言葉に背筋が凍りつく。
「ええっと、では、私たち、生活班はですね……」
福井が話しはじめる。
「参謀班とは違い……、ええっと、違います、もちろん、元の世界には帰りたいです、ですから、参謀班には大いに期待しています。ですが、私たち生活班は別のアプローチをしたいと思っています。それは、ここでの生活をより良いものにしようという試みです」
「何か来るな……、どう思う、ハル……?」
「新月か……、不吉だな……」
福井がスピーチをする間も秋葉と和泉のひそひそ話しが続く……。
背筋が凍った理由、それは、こいつら二人が私より異変に気付くのが早かったから。
私はパーフェクトソルジャーよ……。
小動物の動き、鳥の鳴き声、風に揺らされる枝葉の音、それらすべてが敵の接近を教えてくれる……、そんなものは兵士の常識よ……。
では、なぜ、私は気付けなかったの……、こんな身体だから……?
違う、索敵能力は以前と変らない、こいつら二人が異常なんだ、私は見誤っていた。
「ここで普通に生活を送り、普通に笑って、普通に安心して生きていく、以前と変らない人生を歩む……、みんなが普通に恋をして、普通に結ばれて、やがては子供が生まれて、この広場に子供たちの元気な笑い声がこだまする。私はそうね……、5人くらい赤ちゃん欲しいかな……、えっと、でも、その前に旦那様よね……、うーん、駄目、目移りしちゃって、ひとりは選べない……、あーん、どうしよう……、って、結局、恋ばなかよ、ふざけんなぁ!!」
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