陽キャは天敵
早いもので、私がこの仕事を始めて一ヶ月が経った。
しかしまだまだ慣れないモノで実際に武器を持って標的を攻撃するのも一苦労。
これじゃあ実際のノイズと戦うなんてとてもできない。
最も私は実戦担当ではなく後方のデータ取り担当なので関係はない筈だけど……。
はぁ、今日も早く終わらせて配信をしたい、最近のリスナー数は5000前後、結構定着してしまった様だがあからさまに翼さん目当てな人達はいなくなった様だ。
純粋に私の配信を楽しんでくれる闇の住人が増えたのはいい事だ。
闇から始まり、闇に還るのだ……。
…………
現実逃避はここまでにしよう。
私には今、悩みが二つある。
「詩織さん!」
「あ、うん。どうしたのですか立花さん」
「今日も訓練ですか!私もご一緒して……」
「いや私のはデータ取りですから……」
「?」
「つまり仕事です」
「そ…そうですか?」
一つ、新しい装者がどうしようもなく陽キャ野郎である事。
名前は立花響、滅茶苦茶絡んでくる。
本人は間違いなく善意で来ているのが丸分かりなのだが、あまりにその、眩しくて勘弁して欲しい。
「私は彼女を認められない。彼女は戦いを甘く見ている」
「え、まあ……わかります。なんていうか……そうですね」
「あなたは自分の役目に真摯に向き合っているのに彼女はどうして……」
「(いや、私も稼ぎのいい仕事くらいにしか……)でも彼女もちゃんと自分に出来る事を探してがんばってますし…」
「……でも奏の代わりとは認められない」
二つ、翼さんの機嫌が悪い。おまけに何故か私が翼さんの愚痴を聞く事になってしまったのだが、あの陽キャが「奏さんの代わりに頑張る」みたいな事を言ったらしくそれが翼さんの逆鱗に触れたそうで。
つまり職場の人間関係のもつれに絡まっちまったわけだ。
普段から色々と行動している二人と違い私は基地勤務。どちらか片方、あるいは両方と遭遇する事が一番多く、両方から相談されたり……
…………
私もただの石の下のダンゴムシだよ!!!そんな有名歌手やノイズと戦う秘密の戦士のお悩み相談なんて聞いてられるか!!
あまりにも二人が私を頼りにして来て潰れそうなので司令に抗議に行ったのだが……
「ありがとう加賀美くん。君の仕事ではないというのに君が二人の間に入ってくれているおかげでどちらも潰れずに済んでいる。この分はボーナスに上乗せさせて貰う」
給与に反映されてしまって逃げ難くなってしまったんだが!?
これが大人のやり方かよ!?給与で誤魔化されんぞ!
「そうだ、君の配信機材だが、もしよければこちらで用意しよう」
「あ……いえ、あんまりいいものを貰っても腐らせてしまいそうなので……自分の身の丈にあったものを……探そうと……」
善意だろうけどさー!配信の話題出すのやめてよ!心臓が爆裂しそうだよ!!
「む……そうか。そういえば君にオススメのゲームがあってな、今日持ってきていたんだった」
「そ……それは…ありがとう……ございます」
「うむ、今日のデータ取りが終わったら渡そう」
いや本人は話題合わせようとしてくれてるのわかるし、善意なんだろうけど!その善意が眩しいし「どうせモノで釣ろうとしてるんだろ!」って思ってしまう自分が醜く見えるからやめてくれよ!
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