ライバル認定
アルシナ視点
目が覚める。
そこは治療室。
学校で怪我をした人を治療するための場所。
これまで、アイと会うより前によく見ていたその光景を見て、僕は負けたということを実感した。
「負けた、かぁ……」
当然だ、圧倒的戦力差があるのだから。
当たり前だ、才能の差がありすぎる。
そんな声が、頭の中から響いてくる。
けれど、そんなものは慰めになっていなかった。
「……悔しい」
悔しかった。
あんな簡単にあしらわれたことが。
あんな簡単に、自身を持って放った一撃を対処されたことが。
情けなかった。
まぐれで勝った勝利を、自分の実力だと勘違いした慢心が。
「悔しいッ」
『ならその悔しさをバネにしよう』
声が聞こえた。
思わず目を見開く。
アイだった。
『分かってるよ、アルシナ。あんなふうに簡単にやられて、悔しくないわけがない』
「……それは」
そうだ。
悔しい。
とても悔しい。
けど、それでどうにかなるものじゃない。
それくらい、実力差はあった。
そんな思いが、強くなろうとした時。
『アルシナ、その考えはだめだよ』
アイの言葉が聞こえた。
静かな、けど怒りが含まれているその声。
『それで諦めるの?』
「……え」
気づけば、アイは僕の上に立っていた。
『たった一回、たった一回負けた程度で諦めるの?』
同じ問いかけ。
けれど、先程よりも大きな怒りがそこにはあった。
「諦める、わけ無いじゃないですか」
そうだ、諦められるわけがない。
確かに、今の僕はそんな大きな目的はなかった。
ただ漠然と、強くなる。
そんなことを思ってた。
自分の中で思ってた決意というものも、そうたいしたものじゃなかっただろう。
所詮あれは、ただの緊張。
「せっかく大きな目的ができたんです」
笑う。
「それに、初めて全力でやって、負けた。」
僕はこれまで全力で何かをやってきたなんてことはなかった。
どこかで手を抜いて、全力でやってないし、という逃げ道を作っていた。
けど今回は違う。
全力でやった結果だ。
だから、逃げられないし逃げない。
「僕は、全力でやって、レオネに勝ちたい……!」
『……うん、良かったよ』
アイが安心したように笑う。
『じゃあ、剣魔祭が終わったら更に特訓だね』
「はい、分かってます」
そうやって、笑い合って。
「ところで今はどれくらい進んでるんですか?」
『今は……本戦第4試合、かな』
今の進度を確認した。
にしても本戦第4試合。
結構進んでたみたい。
『とりあえず今の戦いを映すね』
「え?」
そうアイが言った後、空中に画面が現れる。
そこに写っていたのは、レオネと生徒会長。
今の目標と、学園最強。
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