剣聖
アルシナ視点
「感謝しろよー? この俺様に戦闘を教えてもらえるなんて機会、Rクラスですらなかなか無いんだからな?」
少しプライドが高そうな目の前の男は、笑いながらそう言う。
フレイル、って言ってたけど。
その名前って今代剣聖の名前だし本物なんだろうな。
目の前に立つとわかるんだけど、アイが暴力的な強さだとしたら、この人や学園長は研ぎ澄まされた強さだ。
特にこの人はそんな雰囲気が更に強い。
「はい、フレイルさん。よろしくおねがいします」
「……お、おう。素直だな」
挨拶をすると、フレイルさんは困惑したような様子を見せる。
何かあったのかと思い、聞いてみる。
「えっと、何かありましたか?」
「ああいや……。こんな風に挨拶すると大体偽物って疑われるからな。最初っから本物だって信じたやつはお前含めて3人しか居ねぇぞ」
な、なるほど。
確かに損合いそうな相聚してたし、そういうこともあるあろうけど。
けど雰囲気的に間違えることはないだろうけど、と思ってしまう。
「それくらい雰囲気でわかりませんか? なんというか……研ぎ澄まされた強さを感じるっていうか」
そんなことをつい漏らす。
それにフレイルさんは直ぐに反応した。
「おいおいまじかよ。これでも実力は結構隠してたんだけどな。お前の感覚すげぇな」
実力を隠してる、と言われてもピンと来なかった。
なにせ、こんなに制圧的な威圧を放っているのに、何を言っているのだろうか、と。
「じゃあ、戦い方を教えて下さい」
「切り替え早いな。じゃ、はじめっか」
苦笑いをしながら、フレイルさんは腰に下げていた剣を抜いた。
何かが僕を押さえつけるような感覚に襲われて、からだが重くなる。
「っとすまねぇ、感覚ミスったな」
重くなりすぎて体が崩れ落ちかける寸前、フレイルさんから感じられる圧力が消える。
なんとか崩れ落ちるのを止めて、けれど息は荒くなる。
「……あー、とりあえず剣を構えてくれ。矯正から始める」
少しバツが悪そうな顔をしながらフレイルさんはそういった。
***
「まず、剣を扱う上で最も大事なことは、自然体でどれだけ扱えるかということだ。他ごとを推奨するわけじゃないが、そうすりゃ剣戟の途中に他ごとをする暇ができる」
構えている僕の体を少しずつ調整しながら、フレイルさんは言う。
「俺様は戦いに対する心構えとして、『余力は残さず、されど暇は残す』っていう感じでやってるな。まぁ簡単に言えば必要ないところまで力を入れすぎないってことだ」
そんな風に、戦いについての心構えを話しながらフレイルさんは構えの矯正を着々と進めていく。
1分ほどで矯正は終わり、すぐにその体制を維持する訓練が始まった。
「あの、素振りとかはいいんですか?」
「ああ、素振りはやらなくて良い。まずは戦う準備ができる体勢を何時間も続けれるようにやるんだ」
素振りは実家でもやらされた。
だから素振りも重要だと思っていた。
けれど違うのだろうか。
体勢を維持しながら聞く。
「素振りはなんでしないんですか?」
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