05.悪役令嬢は奴隷がほしい
体内に流れる魔力を把握する。一つ、一つ丁寧に。
指を前へと突き出し、炎を意識する。赤、橙、熱量。胸の中から腕へと駆け、指先へと魔力が奔る。
突き出した指先から火が灯る。精々百円ライター程度の火であるけれど、ソレで問題はない。
魔力を意識的に止めて、火を握り消す。人差し指を親指の腹に擦り当てながら。
頭の中、体の感覚で魔力が辿った後を覚える。火を扱う時。現象への干渉。魔力の変化。そのどれもが蓄積されていく。
魔力の通り道。今の魔法であるなら、魔力が溜まっている胸から、指先に掛けての道。その通り道には関がある。想像の中の魔法が正しく式へと置き換わっていく。それを意識していない時と意識した時では魔力の消費が大きく変わる。
同時にその一つが属性式なのだろう。そもそもの俺の魔力適正は風に分類されているし、その事はシャリィ先生が判断してくれた。
最初に属性式を通り、状態式を通り、出された結果に応じて魔力が消費されて出力される。各個が一つの属性だけだと思われているのは最初に属性式を通過するからだと思う。今のように火を出現させるに至って、同じ量の魔力を意識して風を出現させてみたけれど火を出す方がどういう訳か消費魔力は大きかった。
入力をする時、或いは属性式を通る時に変な処理がされているのか、それとも別の理由なのか。それはよくわからない。しかし、なんとなく理解はできた。この世界の魔法はプログラム染みている。たぶん。
シャリィ先生曰く、想像魔法の消費魔力は現象を起こす際に想像されていない現象の補填として世界側がフォローしているらしい。その為に世界側へと補填分の魔力を渡す訳である。世界通貨と言っていたのはコレに当たるのであろう。
そう考え始めると、魔法式という物は世界の言語とも言えるのかもしれない。よくわからないけど。
しかしながら、俺としては既に我慢の限界なのだ。
一年間、シャリィ先生との二人っきりの教えを受けた。
どれほど授業を受けても、どれほど頑張っても、どれほど魔法式に関しての成果をあげようと、シャリィ先生はもう手すら握ってくれないし、撫でてくれないし、脱いでもくれない。
俺は、女の子に触りたい。あわよくば、おっぱいに触りたいし、出来ることならイチャイチャしたい。
ウチのメイドはダメだ。お父様にバレてしまう。俺自身悪ふざけをするようなキャラでもない。お嬢様らしく、おっぱいを触るにはどうすればいいのだろうか。無理である。
いっその事、メイドに命令して脱いでもらうなんて事もできなくはないけれど、彼女らの雇い主は家長であるお父様になる。俺の自由にできる存在ではないし、自由にできたとしてもソレはお父様の力があってこそだ。俺の百合ハーレムではない。
結果的に導き出される答えというのは、案外単純な物になる。
俺の物であり、お父様の管理外であり、尚且俺の支配下にある存在で、できれば俺に甘ければいい。
つまり、奴隷である。
「わたくしだけでよかったのに」
「お戯れを、ディーナ様。これもクラウス様のお願いでして」
「そう。お父様も心配性ですわね」
馬車の中、俺一人という訳にもいかず、目の前には執事が座っている。名前をリヒター。お父様付きの初老を迎えて少しした執事長。
こうして気丈に振る舞ってみているが、俺としてもこの付添いは非常にありがたい事である。お父様に感謝である。リヒターを寄越してくれるとは思わなかったけれど。それほど心配なのだろう。俺とて侯爵令嬢、ある程度の分別はあるつもりだ。たぶん。
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