カスタネット舐めんな
扉を開ける前には、必ずノックをしましょう。そうじゃないと、中にいる人がびっくりしちゃいます。
「うぇいあーっす」
「あら。お疲れ様、愛斗くん」
「お疲れ様ですぅ」
もはや原形をとどめていない挨拶に帰ってくる返事の声にも、ようやく慣れた頃合い。
そう、本日は部屋のドアをノックして開けて、既に中に人がいるんです。そうなの! 彼女たちと練習するときは、僕が入る側なんです! なんて革命!
RoseliaとAfter growとやる時は、どうしても早入りするから後からメンバーに突撃ヨネ〇ケをされることが多かったんだけど……パスパレと練習する時に限っては、俺のスタジオミュージシャンとしての収録後だったりで、致し方が無くみんなが集合した後に到着することが多いのである。
コーチだけしに行く日でも、速めに部屋についたら必ず誰か氏ら要るので、パスパレとやる時に限ってはこの部屋で変な黒歴史みたいなもんを作ることが無いって事だね。最高!
普段から遅めにこればええやんという意見は無しです。却下です。その理由ですが、俺が人を待たせるのが基本的に嫌いだからです。単純って言うな。大事だろうが。なんか人を待たせるのって嫌じゃない? 待つ側だったらいいんだけど、待たせる側はなんかもやもやしちゃうよね。
「愛斗さん、お疲れ様です。今日はレコーディングでしたっけ?」
「YES! みんなの曲のレコーディングしてきたっす。明日くらいには、ワクワクさんが仕上げてくれると思いますぜ」
最近の俺の仕事というと、普通のスタジオミュージシャンの仕事の傍ら、パスパレの曲の前撮りをするというものになっている。最初と聞いていた仕事内容は違うけど、これでもちゃんとお給料に換算されているので、素晴らしいね。なんでも、やっぱり打ち込みより早いし俺が勝手に加えるアレンジが意外に高評価だったりするらしい。ま、細かい所は編曲の人や、その場にいるプロの方が修正掛けたり訂正くれたりするから、それに従うだけなんだけど。
俺からしたらウマウマなお仕事である。あんまり難しいアレンジ加えたり楽器で暴れすぎたりするとそんなん弾けないからダメって言われるけど、あまりそこら辺の匙加減はわからないので、プロの方の指摘にぶん投げている。正直、スラップ祭りとか速弾きさえしなければええやろとは思っています。
元スタジオミュージシャンでもある麻弥さんと、才能の塊の権化みたいなことを良くしてる日菜さんならワンチャンありそうなんだけどなぁ。
日菜さんは割とギュンギュンやるから、僕のギターだとイメージには合わないのかもしれない。ディレクションって大変だね。
「次の曲ってなんだっけ?」
「ふわふわ時間。簡単だから大丈夫だぞ」
「歌った?」
「歌った」
「ほんと? やったー!」
前撮りは楽器だけ収録するわけではない。ついでにノリでボーカルを収録することだって、たまにはある。基本的には撮らないんだけどね。なんかそういう空気になったら、撮ることもあるよね。
今回は音域的にもギリギリだけど出たと言えば出たので、そのままの勢いで仮音源にしてもらった。自分の声が音源になって、未だに気持ちが悪いけど、なんだかプロになった気分。
ハモリも入れたりなんかしちゃうしね。ハモリがあるだけで、なんかそれっぽく聞こえちゃうの良いよね。まるでプロじゃん。スタジオミュージシャンってほぼプロだったわ。
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