ハーメルン
【完結】精霊とか知らないけど、たぶん全員抱いたぜ [士道 age21]
最終話 精霊とか知らないけど、たぶん全員抱いたぜ
窓の外には夕陽に照らされた街並みが広がっている。ここは街を一望できるほどの高層ビルの一室。そこでノルディックブロンドの髪を頭の後ろで束ねた女性が、ソファーの傍らで立ちながらタブレットを操作していた。
真剣な表情で端末を弄る彼女の横顔は、その美貌と相まってまさに仕事のデキる女といった印象を受ける。
「アイク。たった今、天宮に現れた反転体の反応が消失しました」
「そうか……報告ご苦労、エレン」
アイクと呼ばれた白髪の男は、高級そうな本革のソファーに深く腰かけて背もたれに身体を預けながら、エレンを一瞥した。
ただソファーにだらけながら座っているだけだというのに、数多の女性を虜にしてきたアイクが、エレンのような美人を傍らに置いているとそれだけで絵になるのだ。
「宜しかったのですか? 本当に天宮に向かわなくても」
「構わないよ、エレン。それにあの街には
夜都神
(
ヤトガミ
)
と
あ
(
・
)
の
(
・
)
女
(
・
)
がいる。手出しをするだけ無駄さ」
諦めにも達観にもとれる言い方でアイクが返すと、エレンはやや腑に落ちないといった表情を浮かべるが、特に言い返すことなく再びタブレットに目を落としていく。
「さてと」と言いながらアイクは、ソファーから腰を上げて軽く身嗜みを整えつつ立ち上がった。
「それよりもそろそろ出勤の時間だ。今日こそ
あ
(
・
)
の
(
・
)
漢
(
・
)
に勝つぞ」
エレンの報告を蔑ろにしたアイクは、愉しそうな声でそう言った。彼はまるで遠足に向かう少年のように、ワクワクと心を躍らせている。
かつてアイクにとってエレンが報告を上げたような事柄は最重要事項だった。それこそ何を犠牲にしてでも成し遂げようとした残酷な目標があったのだ。
だが今は違う。今の彼は“
夜の魔術師
(
ウィザード
)
”と呼ばれるカリスマホストだ。
その標的は世の女性たちであり、彼の目標はナンバーワンホストの座を頂くことに為っていた。
そのために彼は今日も現ナンバーワンである漢に挑む。かつてアイクは酒を得たヤトガミに敗れたことがあったが、
あ
(
・
)
の
(
・
)
漢
(
・
)
は本当に一滴の酒も呑まずに、アイクを完封しているのだ。
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