積み上げたもの
「えー、では赤点は30点未満なので、来週に備えて各自復習を怠らないように」
ついに来た……。
来週から中間試験だ。これまでの成果を発揮するとっておきの機会。
だけど、まだ五月と二乃は勉強会に参加していない。何とかして彼女達にも付き合ってもらう必要があるんだけど……。
まずは五月。
意外と単純なところあるから、煽てて乗せて褒めちぎる作戦で行こう。
「五月」
「上杉さん。なんですか?」
「いやー、頑張ってるなーと思って。休み時間なのに予習してるなんて偉い!」
「………」
「家でも自習をしてるんだってね。無遅刻無欠席、忘れ物もしたことない。同じクラスだから分かるよ、あんたは姉妹の中で一番真面目なんだ」
「そ、そうでしょうか」
五月は顔を赤らめた。
よし!ここが勝負どころ!
「うん!ただ馬鹿なだけなんだよ」
「…………………………」
「勉強会に参加してみれば、その努力はきっと身を結ぶよ!」
「………………ふー……そうですね。私一人では限界があると感じていました」
よっしゃ!これで五月も参加してくれる!
「この問題を教えてもらってもいいですか、先生」
「わかりました。後で職員室まで来なさい」
あれー?
ま、まあ、学校の先生に聞くのは間違いじゃないけどさ……。
しょうがない。次だ!
「二乃!」
「げっ。上杉……」
「あんた中間試験は」
「みんな、行こーっ」
あれ、聞いてる?
目の前でシカトぶっこかれたよ。こいつ…。
「あの人、二乃の事呼んでたよ?いいの?」
「あいつ私のストーカー」
誰がお前をストーキングすんだよ。
「まじ?禁断の愛ってやつ?」
「違うわ」
そうだよ。断じて違う。
でも五月と違って、二乃は話すら聞いてくれそうにない。
だけどここで見過ごしてしまったら、貴重な説得のチャンスの一回を逃してしまう事になる。だから……。
「私は諦めないよ!」
「…………」
「祭りの日、一度は付き合ってくれたでしょ!」
「ちょっ」
「えっ。二乃、マジで?」
私は私の気持ちを正直に伝える事しかできない。さっきの五月みたいに慣れない事をするのはやめだ!
私の気持ち、全部受け取って!
「なんならあんたの家でもいいよ!あと一回だけ……あと一回だけでいいから!二乃!私が貴女を一人前の女にしてあげるから!貴女の知らない事を、たくさん教えてあげる!」
「…………」
言ってやった……。
私の気持ち、きっと二乃にも伝わっている筈!
だけど、先に口を開いたのは二乃の友達二人組だった。
「まじやばいわ。わりかし尊み深いよ。二乃あんた、百合ってたんだね」
「「!?」」
「アリよりのアリだね。女の子同士の恋愛って素敵だと思うよ」
「違うわよっ!」
「違うよ!」
まったく。キラキラ輝いた顔で何言ってんだよこの子達。
私はただ、勉強を教えたいだけだってのに。
ねっ?二乃もそう思うでしょ?
「上杉!誤解されるでしょ!」
あれー?
「なんだよー。この子結構可愛いし、全然イケるだって」
「同性同士の禁断の愛って良くない?」
「うるさいわ」
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