ハーメルン
異世界で 上前はねて 生きていく (詠み人知らず)
第10話 ウザいけど 憎みきれない ろくでなし

シェンカー商会 商会長 『笑顔』のブレット (47)



我が末子のサワディであるが、あれは曽祖父に似たのかもしれん。

交易路を牛耳る山賊を祖とする我がシェンカー家であるが、今ではこの城塞都市トルキイバの小麦カルテルの筆頭兼、商業ギルドの次席を務めている。

まさに栄華の極みとも言える。

しかしかつて持っていた武力は解体され、言わばトルキイバの代官の走狗のように扱われていることも間違いではない。

逆に言えば、たかだか山賊の家を丁重に紐付きにするほど、国は当時のシェンカー家を恐れたのだ。

曽祖父の代のシェンカー家は3つの都市の真ん中の広大な平原を丸ごと牛耳り、交易の守護を担っていたという。

生活無能力者で、自分の名前すら書けなかったという話だが、曽祖父は指一つ動かさずに飛竜の頸をねじ切る男だったそうだ。

今で言う、超能力者だったのだろう。

討伐軍を送られては極めて残忍な方法で返り討ちにし、川の流れを捻じ曲げて付近の穀倉地帯を丸ごと人質に取ったという。

みかじめ料を取っての護衛を経て、シェンカー家主導での直接交易を始めてからは丸くなったという話だが……

つい20年ほど前までトルキイバのど真ん中に曽祖父の首塚が祀られていたあたり、その恐怖には根深いものがあったようだ。

そんな中生まれた子供が3男のサワディだ。

この子は早熟で、立って歩くようになる頃から芝居と金儲けの事ばかり考えているような子だった。

それだけならば商家の息子として及第点といったところだが、この子の金儲けには常に一定の具体性があった。

そして頭もよく、計算もいつの間にか覚え、日々の小遣いを家の丁稚に貸し出して利息まで取る始末。

うちの家督はサワディのちょうど15歳年上の兄、ジェルスタンが継ぐことで纏まっているというのに……

それが揺らぎかねない優秀さと、恐ろしいほどの金への嗅覚。

私は早々に、この子を魔導学園に入れることを決めた。

魔法使いになれば我が家の家督などに興味は持たぬだろうし、周りの者も迂闊には担ぎ上げん。

一人の強力な個人の実力で成り上がった我が家だが……

同時に、一人の強力な個人に依存し切ってしまった後の悲惨さもよく知っているからだ。

商売の道は魑魅魍魎が跋扈する道ではあるが、逆に超人の生きていけるような道でもない。

足一本生やして金貨5枚、鳥竜倒して金貨2枚などという世界で生きている輩が、小麦2袋売って半銅貨1枚なんてせこせこした世界でやっていけるわけがない。

私は可愛いサワディを超人鬼人達の世界に追放して、一時の安寧を得た……はずだった。

だが、サワディは商売の道へと帰ってきてしまった。

それも曽祖父と同じように、自前の武力を携えてだ。

やはり血は争えないのだろう。

この百年で皇帝も代わり、代官は10人以上交代した。

大盗賊黒ひげシェンカーは、今や古き時代のお伽噺だ。

サワディをマークしている人間は誰もいない、私だけが息子が鬼子であることを知っている。

願わくば、長男ジェルスタンか次男シシリキのどちらかが、無事に店を次代へと繋がんことを……

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