ハーメルン
異世界で 上前はねて 生きていく (詠み人知らず)
第11話 踊り子が 腰をふらずに コシ作る
なぜか上の兄貴と下の兄貴が『集めてんだろ?』って、ミニカーみたいなノリで奴隷をくれた。
よくわかんないけど、貰っておいた。
うちは宿舎なんかの設備の問題なんかもあってゆっくりと奴隷を購入しているわけだが、基本的に人手不足だからな。
「シーリィです、歌と踊りが得意です、17歳、処女です」
上の兄貴がくれたのは、抜けるように白い肌と折れそうなぐらい細い腰をした人族の女だ。
珍しいピンク色の髪の毛をゆるふわにカールさせて、ラメ入りの香油で前髪を左右に纏めている。
「ハントです、私は詩と裁縫が得意です、19歳、処女です」
下の兄貴がくれたのは、知識層の証とも言える銀縁のメガネをかけた知的な人族の美女だ。
珍しい緑色の髪をひっつめにして、上品な木のバレッタで止めている。
ふたりとも美人で若くてスタイル良くて処女、高かったんだろうなぁ……
でもうちの冒険者パーティに踊り子や吟遊詩人はいらないんだよな、どう使おう。
そうだ、そういえば再来月の感謝祭で地域貢献のために飯と出し物を振る舞おうと思ってたんだった。
「料理は作れるか?」
「あの、家庭料理ぐらいなら……」
「私も……」
「食えるもんが作れるなら上等だ、うちの冒険者達の料理番をやってもらおうかな」
「はぁ……」
「それでいいのでしたら」
二人とも拍子抜けといった感じだ。
俺は放蕩な兄貴の家庭を間近で見て育ったから、ぶっちゃけ将来できるであろう嫁さんと商売女以外を相手にする気はないんだ。
奴隷とはいえ人間だ、変に肉体関係があったら割り切れないことも出てくるだろうしな。
昼ドラは本気で勘弁だ。
隠し子が見つかって、嫁さんに頭割られて転がり込んできた兄貴を治療したのはトラウマなんだ。
「あと再来月の感謝祭で創作料理を振る舞うつもりだから、その開発にも付き合って」
「わかりました」
「そう大したものは作れませんが……」
以前ポテトチップス作りを失敗し、その後もホイップクリーム制作に失敗し、うろ覚えのチーズケーキで集団食中毒事件を起こした俺は反省と共に一つの回答を見つけたのだ。
自分でやるのは無理だから、人にやらせようと。
そもそも俺の基本方針は『他人を鍛える』。
奴隷は裏切らない、つまり奴隷を鍛える努力も裏切らないということだ。
評価の底が抜けたような会社での努力と違って、リターンのある努力は楽しいもんだ。
増え続けるノルマ……
増えない給料……
うっ、頭が……
そうして一週間後。
二人がぼちぼち新生活に慣れてきたところを見計らって、感謝祭向けのメニュー開発が始まった。
「パスタを作るんですか?」
「奴隷商館でも作り方を習いました」
ここらへんじゃパスタは昔からある大衆食、家庭料理だ。
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