ハーメルン
異世界で 上前はねて 生きていく (詠み人知らず)
第13話 成績は 低いぐらいが 安心だ

魔法使いは特権階級である。

これは紛れもない事実だ。

なんせ高等教育を行う機関が魔導学園しかないんだからな。

世の中の上の方に行くと、全員が全員魔法使いなんだ。

庶民の間ではお伽噺に語られるような英傑でも、蓋を開けてみれば単なるパトロール兵だったりする。

これは意図的に作られた断絶でもある。

貴種が貴種であるために、下民が安寧の中で下民であり続けるために、知識は独占されてきた。

セーフティとは、破られぬからセーフティなのだ。

単なる金を持った下民が魔法使いになれぬように、学園には入学に際して明確な()の基準がある。

驚くべき事に、本当に貴種と下民は人種からして全く違うものなのだ。

故に1代での成り上がりは不可能で、金持ちの家は何代も金持ちを続けて貴種の血を取り込み続けなければいけない。

まさに我がシェンカー家はそういう家だ。

長々と考え込んでしまったが、俺が何を言いたいのかというと……

貴族 = 魔法使いであるが。

魔法使い = 貴族ではないということだ。

故に俺は強者には徹底的にへりくだる。

これは生存戦略なのだ。



「貴様のやっている下民への施しとやら、近頃少々小耳に挟んだぞ」

「へへぇ〜、エストマ様に気にかけて頂けるなど、恐悦至極にございます」

「非才の身ながらも、腐らず地道にやっておるようだな」

「有り難く存じます」

「造魔術のマリノ教授からも評判を聞いておる、これからも励めよ」

「もちろんでございます、これからもお見限りなきようよろしくお願い申し上げます」

「うむ」



指導教官であるエストマ翁から解放された俺は、気疲れで重くなった肩に回復魔法をかけながら校舎を歩いていた。

エストマ翁は我が国のシーレーン防衛の英雄だ。

海底ダンジョンから水棲の魔物が溢れて押し寄せてきた時、斥力魔法で海をかち割って海底まで歩いて迷宮主をぶち殺しに行ったんだとか。

バリバリの古い貴族家の人ながら、商家の出で攻撃魔法がろくに使えない俺にも存在価値を見出してくれる開明的な人なのだ。



「お、サワディじゃん」

「評価どうでした?」

「おお、ジニにエラ、可だよ可。やっぱ攻撃魔法ろくに使えないのは辛いわ」



家に帰ろうかと向かった学校のロビーで友人のジニとエラに会った、どうやらこの2人も今日が成績発表だったようだ。

ジニは老舗の家具職人の家の3男で、俺と同じような境遇。

エラは1代貴族の孫、平たく言えば貴族にコネがあるだけの平民だ。

同期で貴種じゃないのは俺たち3人だけ。

しかも3人とも芝居好きとあって、何かと仲良くしているのだ。



「俺は攻撃魔法使えるのに可だぜ」

「僕なんか研究室から不可もらっちゃいましたよ、お祖父様に怒られます」

「まぁ俺たち平民はクビにならなかっただけ良かったと思おうや」

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