ハーメルン
異世界で 上前はねて 生きていく (詠み人知らず)
第9話 押し売りと 神の使いに ご用心

「はじめまして、冒険者ギルドの()からきました。ラズリーと申します」

「はぁ」



ある日、うちの丁稚に案内されて物凄く胡散臭い男がやってきた。



「サワディ・シェンカー様ですね?ご高名はかねがね伺っております」

「はぁ」



白いローブに生成りのシャツ、おまけに薄汚れて細かいハゲのある靴。

なのに結構清潔にしているらしい身体、この時点で俺はなんとなくこいつの正体に当たりをつけていた。



「町では欠損奴隷を救って更生させておられるという慈愛のサワディ様の噂でもちきりですよ」

「へぇ」



慈愛、ね。



「実は私が個人的に(・・・・)所属しています神聖救貧院では力及ばず治療師の手が足りておりません。これは誠に由々しき事態でして、働き手の減少により治安の低下はもちろん、このままでは人々の神への信仰すら揺らぎかねません」

「はぁ」



やはり宗教だったか。

それもこの町で一番権威のない、ある意味俺の商売敵の神聖クソ救貧院の奴らだ。



「つきましては、サワディ様にも素晴らしい神聖救貧院の活動にぜひ参加していただきたく存じまして……」

「仕事の依頼ということですか?」



一応聞くだけ聞いてみる。

仕事を頼まれたとて、受けるとは言っていないが。



「申し訳ありませんが、救貧院は清貧を常としておりまして……心苦しいのですが喜捨というわけにはなりませんでしょうか?」

「誠に心苦しいのですが、私はこの国の保証する信仰の自由に則りまして金銭(おかね)を信仰しておりますので……」



数多の神の実在する世界で、一神教の強要など自殺行為でしかない。

傍迷惑な神のご加護(・・・)は降る人間を選ばないからな。

神は時に人を救うが、金は常に人を救う。

故に俺は金銭を信じているのだ。



「おお!それはあまりにも寂しいお考え!金があなたを救ってくれますでしょうか?金があなたを温めてくれますでしょうか?違います、真心こそが……」

「申し訳ないが、私もこれで忙しい身、このへんで」



こんな奴の相手を長々としてしまったな。

丁稚にはよく言い含めておかなければならんだろう。



「いやいや、お待ち下さい。そも、この世界は善神ウェカンが……」

「お客様がお帰りだぞ〜」



付き合うつもりはない。

ある意味サービス業な乞食達にはプライドもあるが、この手の連中にはそれもない。


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