だ゛ず゛げ゛で゛ぇ゛ーっ!!
時刻は既に夕方。俺が遺跡に到着する頃には、澄みきっていた青空はオレンジ色に染まっていた。
目撃情報によれば、呪術のトリデウスは長い杖を持っていて布で顔を覆い隠し、ボロボロな紫色のローブを身に纏っている痩せ細った老人の姿をしているらしい。
そんな特徴的すぎる見た目ならば、見つかればすぐにわかる筈だ。逃がさないように、出会い頭にヘッドロックしてやる。
意を決して、最奥に遺跡が存在する洞窟の中へと入っていった。
洞窟内は以前とさほど変化はなく、生きてた頃の俺が解除した洞窟のトラップもそのままだ。
トリデウスが再び侵入者を迎撃できる拠点として作り直したものだと思っていたので、些か拍子抜けだ。まぁ、安全に越したことはないが。
フワフワと進んでいると、俺がアルトに対して仕掛けたトラップの残骸が、道の端にちらほらと見受けられた。
どれもこれもアイツに利用された痕跡が残っており、思わず吹きだした。
罠探知ができるエリンちゃんがパーティにいたのに、俺ってかなり無意味なことしてたんだなぁ。
生前の俺に呆れながら進んでいくと、あっさりと最奥の遺跡に到達した。
大きな広場の中央に台座があるその光景は、なんとも懐かしい記憶を想起させる。
そういえば俺って死ぬ前、アルトに「ばーか」しか言ってなかったな。なんともはた迷惑な遺言だ。
洞窟から遺跡まではほぼ直線の一本道で、道中人影を見かけることはなかったから、トリデウスがいるとすればこの広場以外にはありえない。
ヤツを探すべく、周囲を見渡した。
「……おっ」
台座の後ろにボロボロなローブを着こんでいる人物が座り込んでいるのを発見し、俺はニヤついた。
間違いない。台座に長い杖も立てかけてあるし、布で顔を包んでいる。きっとアイツがトリデウスだ。
呪術師と死霊使いはほとんど同じ部類の存在だし、ヤツも俺のことは見えるはず。それなら、俺が奴に触れることもできるってことだ。
しめしめ、相手は俺に気づいていないし、このまま不意打ちで羽交い絞めにしてやるぜ。
そーっと、ゆぅーっくりと近づいて……よしっ、今だ!
「オラっ!」
「──わっ!?」
勢いよくヤツに覆いかぶさり、両脇を腕で強く締め付け、足を俺の両足で挟んで拘束した。
思っていたよりもトリデウスの身体は小さく、俺でも抑え込めるほどだった。
「だっ、だれ──」
「うるせぇ大人しくしろーっ!」
「いたただっ!!」
更に締め付けを強くして、抵抗させないようにする。ここで逃がしたらいろいろと大変なのだ。
不意打ちが成功したこの機会に、呪いの短剣を奪ってやる。……それにしても、老人の割には声高いな。
俺が片手でヤツの首を抑えながらもう片方の手で体中を漁っていると、俺の顔に擦れてトリデウスの顔を包んでいた布がズレ始めた。
ちょうどいい、その素顔もしっかり覚えといてやる。
「ほらっ、覆面外せ!」
「うぅっ、やめっ……」
トリデウスの言葉を無視して、勢いよく顔を覆っている布を剥ぎ取った。
「やめぇっ、やめるのだ! ……うわぁっ!」
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