SSS15:ドズルの欲望~ジオン共和国軍再建記~
眉間にしわを寄せ黙りこくる兄を見ながらドズル・ザビ国防大臣は落ち着かない気持ちで、兄ギレン・ザビ首相の表情の原因である手元の端末へと視線を落とした。そこに大きく映し出されているのは87年度中期防衛計画の文字である。
「ドズル、今の軍事予算が我が国の国家予算の何%を占めているか言ってみろ」
ギレン首相の言葉にドズルは若干目を泳がせながら、なんとか口を動かした。
「あー、確か、1割、…だったか?」
ドズルの回答に不満だったのか、ギレン首相は溜息を吐きながら口を開く。
「20%だ。お前の持って来た中期計画を読んだが、更に増額を求めているな?今年度の我が国の予算から考えれば、この数字は実に25%相当になる。国家予算の四分の一を軍事費につぎ込めとお前は言うのか?」
確かに国家予算の25%という数字は非常に大きい割合だ、それが平時であれば尚更である。旧世紀の大国でも15%程であった事からも、軍が要求している額が大きいことは明らかだ。だがドズルとしても言い分はある。木星航路の安定化を目的としたアステロイドベルトの開拓が順調に進んだことにより、ジオンの勢力圏が大幅に拡大したためだ。
「そうは言うが兄貴、申請額は戦前の半額だぞ。そりゃあ予算の割合でそうなるのは解るが…」
苦々しい思いでそう返せば、ギレン首相は平然と答えた。
「戦時と平時だ比較にならん。第一あの時は開戦を前提とした予算配分だったのだ、アレを当たり前と思って貰っては困る」
「承知しているさ。だから戦後の軍縮にも協力しただろう?だが防衛圏の拡大に対応するためにはどうしても手が要るし、何よりその金額は軍人への各種年金を含んだ数字だろう?実際軍の手元に来るのは更に減るんだぞ?」
その様子に苛立ちを感じながらもドズルはそれを抑えてなお言いつのる。だがそれに対する返事は冷淡なものだった。
「だから人員の拡大については前回の議会で承認しただろう?」
「人が居ても装備が無ければ意味がないだろう!」
「おかしなことを言うな。軍縮の際にモスボールした装備には余裕があるはずだぞ?」
その言葉にドズルは頭を抱えたくなった。確かにモスボールされた装備は多くあるが、そのほとんどはMSやMAであり、今回更新を申請している艦艇については殆どが解体されてしまっている。元々建造費が高い艦艇はギリギリまで使い倒される事が多く、現役の艦艇についても近代化改修を繰り返しているが、それでも限界はある。
「MSについてはある程度誤魔化せるだろうが、艦の方はもう限界だ。特にムサイがまずい」
ルウム戦役における損害を補填するために増産された艦艇はムサイが大半であったが、ムサイは元々連邦軍との艦隊決戦を前提に設計された艦であり、MSの運用能力と正面火力を重視している。特に短期決戦を想定していたこともあって航続力や居住性に難点を抱えており、現在増加している任務である火星、アステロイドベルトへの派遣には全く適していないのだ。現状これらの任務には航続距離に優れるグワジン級を当てているが、元々艦隊旗艦として設計された同艦は維持運用費がその他の艦艇とは比較にならず、また戦力として重要な位置を占めるこの艦を警備艦として辺境へ派遣する事には国防の面から本国で疑問の声が上がっている。軍としてもコストパフォーマンスの悪い同艦をアステロイドベルトへ送る事には否定的であり、その点からも任務に適した新型艦の必要性が高まっていた。
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